≪不動産経済ファンドレビュー≫外資系が上位を占める―2022年の売買市場を振り返る
不動産経済ファンドレビュー

 コロナ禍3年目において、不動産投資市場は堅調に推移した。投資額は2021年を下回ったものの、大型取引が全体をけん引し、底堅さを見せた。アセット別では物流が前年を大きく下回った。取得先の属性を見ると、外資系が上位を占め、キャッシュの創出、BSのスリム化を狙った事業会社による取引が目立った一方で、Jリートによる投資がマイナスを強いられた。2022年の売買市場を振り返る。

年間売買取引額は3.4%減の3兆1381億円

アセット毎ではオフィス最大、物流施設は半減

 ファンドレビュー編集部が調べた、2022年の年間売買取引額(100億円以上)は、3兆1381億3200万円で、前年と比べて3.42%、1111億4500万円減少した。アセット毎に見ると、オフィスが最も取引額が多く、1兆4790億4500万円で、37.60%、40411億8500万円増加した。次いで土地が3971億8800万円で、7.32%、313億5500万円減少。その他、ホテルの取引額が増加した半面、物流施設が半減、商業施設も減少に転じた。

 今年行われた取引をアセット毎に見ると、オフィスは、12月にヒューリックを中心とする企業連合が取得した東京・千代田区の大型複合ビル「大手町プレイス」の政府保有分が最大。投資額は4000億円を超え、国内不動産取引で過去最大となった。

 「大手町」(東京都千代田区大手町2-1-17)は、東京メトロ大手町駅と直結、JR東京駅から徒歩7分に立地。敷地面積1万9940.06㎡(6031.86坪)、S・SRC造陸屋根地下3階地上35階建て、延床面積35万780.89㎡(10万6111.21坪)=全体。そのうち、「イーストタワー」の事務所部分である5階~31階と、低層部の育成用途フロア地下2階~5階および7階を取得した。竣工は2018年8月、住友商事が本社機能を置いており、7割超を賃借している。優れた交通利便性のほか、約750㎡のホールを有するなど地域の中核的物件であることから、今後も高稼働率での運用が見込まれている。

 その他、3月に香港大手不動産ファンドのガウ・キャピタル・パートナーズ(GCP)が、2021年11月に上場を廃止したインベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人が保有していた18物件を3243億6000万円で取得した。

 またイギリス大手保険会社プルデンシャルの資産運用会社であるM&Gインベストメントが、10月に横浜・みなとみらい地区の「みなとみらいセンタービル」を取得した。取得額は約1000億円。取得先はヒューリック。同物件は、5月にヒューリックがゴールドマンサックス(GS)のSPCから取得。取得額は非開示としたが、GSが2020年に約980億円で取得していたことからほぼ同等の価格での取引と見られていた。

「みなとみらい」(横浜市西区みなとみらい3-6-1)は、横浜高速鉄道みなとみらい線みなとみらい駅と地下で直結。敷地面積1万131.56㎡(3064.79坪)、RC造・地下2階地上21階建て、延床面積9万1871.98㎡(2万7791.27坪)。竣工は2010年4月。同物件は、横浜みなとみらい地区のほぼ中心である33街区に位置。同街区には「MMパークビル」や「みなとみらいビジネススクエア」などが建ち、企業の本社や研究開発拠点が集積している。今回の取得についてM&Gリアルエステートは、横浜が東京に近いうえに賃料が比較的抑えられていることから、国内企業にとって魅力が高く、長期的な成長が期待出来ると判断したようだ。

 なお、横浜・みなとみらい地区では6月にレンドリースなどが出資するファンドが「リーフみなとみらい」を400億円程度で取得したほか、4月にはモルガン・スタンレー関連のSPCが「横浜野村ビル」の準共有持分を300億円強で追加取得した。  物流施設は、取引額が3778億6900万円で前年比3787億4100万円、50.06%減と半減した。取引にややブレーキがかかる中で、ガウ・キャピタルは11月30日に、ブラックストーンから首都圏に立地する物流施設7物件を約800億円で取得した。同社にとって、物流施設の対日初投資となり、同社のイザベラ・ロー氏は「Eコマースの隆盛が続くと見ている。今後2~3年で20億から30億ドルを投資する」と語り、中期的に投資意欲が高いことをうかがわせている。3月には、三菱地所物流リート投資法人が「ロジポート川崎ベイ」の準共有持分45%を360億円で取得した。以下、100億円以上の取引では、ほとんどがJリートによる売買で占められた。

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