(提供:日刊不動産経済通信)成長著しいインド。人口では中国を抜き、世界一に躍り出た。GDPは、旧宗主国である英国を超え、やがてドイツ、日本を抜き去るとみられている。やって来た「インドの時代」。不動産マーケットやポテンシャル、チャンスをどうみればよいか進出企業に聞いた。シリーズ第1回は、かねてからインド事業を展開する玄海キャピタルマネジメント・松尾正俊社長。
―インド不動産マーケットの現況は。
松尾氏 広いインドの中でもわれわれがみているのは主にムンバイとバンガロールだ。ムンバイは金融の中心。インドでビジネスをしたいあらゆる人たちがここに来る。上海や深センのように世界的な金融都市になるのは間違いないだろう。一方、バンガロールは圧倒的にIT。世界の冠たるIT企業が集結しており、そのインパクトを見たとき、この国の将来には何かあると誰もが感じるはずだ。マンション開発は分譲ばかり、賃貸はない。高度成長期の日本と同じく「家を買え、上がるから」といった様相だ。ムンバイは、人口2000万人のうち3分の1がスラム居住者。当社ファイナンスの開発の半分がスラムの再開発であり、スラム居住者は地権者棟に集約される。デベロッパーは、ESG投資として割増し容積をもらい、中心部の土地を買わずして開発し、大きな利益を挙げている。
―チャンスはあるのか。
松尾氏 マクロなストーリーでは完璧なインドだが、土地を買い上げ開発するには法整備が至らず、土地の謄本も信用できない。エクスキューション(取引手続き)も非常に面倒だ。最初からリスクを取るのはやめて、地元デベロッパーのプロジェクトにデットファイナンスで参画し、開発は次のステップとすることを薦めている。インドには成長があるが、それに対する不動産ファイナンスが未整備。地元資金が不動産に向いていないところにチャンスがある。成功の鍵は、不動産がわかるか、わからないかではない。現地パートナーとどううまくやるか。ローカル企業を使い切る能力が不動産がわかることより大事だ。
―インド事業の展望は。
松尾氏 地元デベのマンションプロジェクトにローンを供与するファンドは、(安全度の高い)シニアローンでありながら金利18%を取る。コロナ禍にあっても地元の実需層に良く売れ、現在、第2号ファンドを立ち上げている。また、日本とインドのデベの開発JVをアレンジし、開発ステージに乗り出す。さらに、その後のフェーズでは、オフィス事業に参加したり、日本の資本を入れデベロッパーを設立し、リートの組成にも参画したい。高級マンション、ホテル、老人ホームなど、これからの国だ。つくるものは何でもある。
―インドのポテンシャルについて。
松尾氏 巨大なマーケットであり、優秀な人が続々出て、英語や数学ができる。不動産にはリートもある。これから何があってもおかしくないだろう。若い社員を送り、交渉のトレーニングに鍛えるのも良い。縮小均衡のプランでは企業は生き残れない。外に出るのは必然といえる。わかる人なら出ていくべきだ。
玄海キャピタルマネジメント 代表取締役 松尾正俊
1987年三井不動産入社。三井不動産USA、米投資銀行、福岡リアルティを経て、2006年玄海キャピタルを設立。東京大学法学部卒。