企業のオフィス戦略が議論される中で ―フレキシブルオフィスの可能性を見る(上)


 テレワークの推奨とともに注目を集めたフレキシブルオフィス。コロナ禍以前から、働き方改革が追い風となり1フロアを小区画の専有部に分割したオフィスや、フリーアドレス形式の席貸しオフィスは拠点数を伸ばしてきた。現在、企業のオフィス戦略が議論され、オフィスのフレキシブルな活用がニューノーマルになるといった意見が台頭している。フレキシブルオフィスに対する需要の現状を整理し、今後の利活用について可能性を探った。


大企業の多拠点化がFOの展開を後押し
働き方はテレワークで可能な仕事の選別進む


 「雨後のタケノコのようにフレキシブルオフィスが増えている」。ある不動産業界関係者は、急拡大するフレキシブルオフィス(以下、FO)の拠点数をこう表現する。実際、ザイマックス不動産総合研究所が2月17日に公表した「フレキシブルオフィス市場調査2021」によると、東京23区内のFO拠点数は762件・19万4000坪に上る。2015年は119件・3万2000坪だったため、5年間で約6倍以上に増加した計算になる。ただ、同研究所調査によるFOの定義は、「一般的な賃貸借契約によらず利用契約を結び、事業者が主に法人ユーザーに提供するワークプレイスサービス」とあり、賃貸借契約を伴うFOは含まれていない。近年では、FOの賃貸借契約は、退去予告や敷金などの面で柔軟に対応している物件も散見されるため、実際は調査より多くのFOが供給されていると考えられる。
 FOの需要は、ベンチャー企業等の小規模事業者と、大企業のオフィス分散・多拠点化ニーズという2種類がある。FOの形態としては、個室を入居者専有スペースとして設けている物件と、フリーアドレス形式で座席利用を提供している物件、またはその混合物件とに大別できる。それぞれ、共用部として会議室やラウンジ等が併設され、各種サービスなどで差別化が図られる。この需要と形態に合致するものは、本記事ではFOと呼ぶこととする。
 需要の1つである小規模事業者の動向を見ると、新たな起業家は2007年の18.1万人から2017年の16.0万人にかけて低位で推移している(2020年版中小企業白書)。東京商工リサーチによる新設法人動向調査では、リーマン・ショック後の2009年から増加傾向を示しているが、直近の5年では2015年が12万4996社、2020年が13万1238社と大きな伸びとは言えない。入居者同士が交流を行うことでイノベーションを促すことを付加価値とするFOは、渋谷や品川エリアに見られているが、FO全体をリードする流れとは言い難い。
 ザイマックス不動産総合研究所の石崎主任研究員は、「働き方改革を受け、2015年頃から大企業はワークプレイスの分散化へ動いていた。メインオフィスに加えてテレワークで働くための場所を整備する流れが進行していた」としたうえで、「コロナ禍が到来し、そのオフィス分散ニーズが大きく伸びている。現在は、オンラインミーティングにも対応できる個室のニーズと、従業員の通勤エリアが含まれる郊外エリアで多拠点利用を行うニーズが強い」と話しており、大企業による多拠点化需要が、FOの活発な展開を後押ししている。ザイマックスは、企業のサテライトニーズに着目し、「ZXY(ジザイ)」を全国に155拠点展開。拠点数の多さを背景に、会員企業は1671社、ユーザー数は36万人に達する活況ぶりだ。企業のオフィス戦略が議論される中で ―フレキシブルオフィスの可能性を見る(下)へ続く

2021/8/5 不動産経済ファンドレビュー

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