借金大国ニッポンの不動産バブル―低金利に慣れた市場に問われる耐性(下)

 

新型コロナ感染拡大で景気が悪化しているが、株価と不動産価格が上がり続けている。日本だけでなく世界各国が財政出動と低金利政策にかじを切り、市中に溢れたマネーがリスク資産に向かっている構図が鮮明だ。日本政府の2021年度予算案は一般会計が106.6兆円に上り9年連続で過去最大を更新。歳出が拡大する一方で、税収が落ち込み4割を借金で賄う台所事情の中で不動産市場はセーフヘブンか。

 【借金大国ニッポンの不動産バブル―低金利に慣れた市場に問われる耐性(上)より続く】経済の底割れを防ぐために市中に大量にお金を供給する。コロナ対策で国は財政出動するものの、それを補うために増税するわけにもいかずに国債発行を連発。その国債のほとんどは日銀が引き受けている。日本国債の信認が落ちて金利が上昇に向かう最悪のケースともなれば不動産市場は壊滅的な打撃を受けるのは必至。有利子負債の調達コストは、超低金利を背景に足元で低下を続けている。Jリート市場全体で見た場合の有利子負債残高は2020年12月末時点で9.2兆円に及び、その残高は増加傾向をたどっている。仮に金利が上昇すると、不動産需要が一気に急減すると警戒感を常に持つ専門家は少なくない。

中堅・準大手でも賃料負担能力の低下が加速
長期的なトレンド転換が確認される1年に


 借金体質の不動産会社に対する格付け会社の見方も機敏だ。ムーディーズ・ジャパンは、三井不動産の格付け見通しを12月に安定的からネガティブに引き下げた。「三井不動産の有利子負債調達を伴う大規模開発プロジェクトによるレバレッジの上昇と、同社がその上昇傾向を転換させ財務レバレッジを持続的に低下させることができるかどうか」という不確実性を反映していると説明している。三井不の有利子負債は 2019 年 3 月時点の 2.9 兆円、2020 年 3 月時点の 3.5 兆円から足元で 3.8 兆円とムーディーズの従来の想定をはるかに上回るペースで増加しており、引き続き高い水準にとどまると予測している。
 新型コロナの感染状況が欧米に比べて日本は低く抑え込まれていることから価格や賃料に大きな変化も見られない。強気のマーケットが続くが、不動産市場に詳しいワイズ不動産投資顧問(東京都千代田区)の山田純男社長は、「価格は既に天井感にある。アクセルをベタ踏みしての不動産購入は勧められない」と指摘する。これからババ抜き合戦、チキンレース市場になるとの指摘も少なくない。コロナ禍が長引いていることで小規模零細企業にとどまらず、一定規模の中堅・準大手でも賃料負担能力の低下が加速に向かう。
 収益環境の回復が見通せない中で強気のシナリオを描くことは禁物だ。「例えば、東京23区の投資用マンションの利回りがNOIベースで4%台が珍しくないが、マンションの購入にかかる諸費用を差し引くと旨みのある状況ではなくなった」(山田氏)。中小企業の経営者のなかには、高騰した収益物件を買うのではなく、修繕費や管理費などのランニングコストもかからずに国債に近い安定資産として底地に目を向けているという。
 東日本大震災後に自民・安倍政権が誕生して金融緩和にかじを切り、東京五輪・パラリンピック開催決定など10年近くにわたり収益を上げ、築き上げた資産を増やす場面から減らさない守りの姿勢へと長期的なトレンドの転換が確認される1年となる。コロナ禍で不動産需要における構造変化が緩やかに進むとともに、これまで低金利で安定的に恩恵を受けてきた不動産に激震が来ないか。忍び寄るリスクに注意を払う必要がありそうだ。

2021/2/5 不動産経済ファンドレビュー

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