首都圏マンション 需給ともに好調 価格は最高値更新 2022年は3.4万戸 再開発タワーが市場をけん引 不動産経済研究所 企画調査部 主任研究員 松田忠司
不動産経済研究所 企画調査部 主任研究員 松田忠司

供給3万戸台に回復、販売も好調
価格は最高値を更新

 2021年は需給ともに好調が続いた1年だった。発売戸数は3万3636戸と、前年の2万7228戸から23.5%増加して2年ぶりに3万戸台に回復、コロナ禍前である2019年の発売戸数(3万1238戸)も上回った。また初月契約率の平均は73.3%と前年比7.3ポイントのアップで、2015年以来6年ぶりに70%台に乗せている。
 初月契約率をエリア別に見ると、では東京23区72.5%(前年比6.3Pアップ)、東京都下74.8%(同25.2Pアップ)、神奈川県71.8%(同1.8Pアップ)、埼玉県70.6%(同9.4Pアップ)、千葉県80.3%(同3.4Pアップ)と全エリアが70%を上回っており、都心、郊外を問わずに好調であったこと分かる。郊外では1回目の緊急事態宣言の前、2018年辺りから2020年の春までは、価格高騰によって購入希望者が離れてしまい、多くの物件が販売に苦戦していた。しかし2020年の夏以降は市場が一変、在宅ワークやオフピーク通勤が急速に普及した結果、人気が急回復し首都圏全体の市況も好転した。そしてマンション購入希望者の積極姿勢は変わらないまま2021年を終えた。
 2021年の戸当たり価格は6260万円、㎡単価は93.6万円と、前年比それぞれ2.9%、1.2%の上昇となった。戸当たり、単価ともにバブル期(1990年)の6123万円、93.4万円を上回り、1973年の調査開始以来の最高値を更新した。東京都下と神奈川県では戸当たり、単価ともに下落したのに対し、23区はいずれも上昇しており、特に23区の戸当たり価格の上昇が目立った。億ションの発売戸数は2760戸と、前年の1818戸に比べ942戸(51.8%)も増加、高額物件の供給が価格を一段と押し上げた。
 その一方で、購入希望者の積極的な動きによって在庫の圧縮は一気に進んだ。2020年末の8905戸が2021年5月には6789戸、8月には5889戸まで減少し11月までの4カ月間5000戸台を維持した。例年通り12月は増加したものの6848戸にとどまり、年末としては2015年(6431戸)以来の低水準となっている。

バブル期を超えた価格
しかし市場は当時とは様変わり

 2021年の首都圏マンション価格が1990年を超えて最高値を更新したのは事実だが、データを見比べると市場の様相がまったく異なっていることが分かる。2021年の23区の供給は1万3290戸、首都圏におけるシェアが39.5%であるのに対し、1990年は7225戸、17.4%に過ぎなかった(首都圏の供給は4万1481戸)。バブル期は23区内での用地取得は非常に困難で物件も少なく、当時最も供給が多かったのは神奈川県の1万3991戸、埼玉県も1万149戸で1万戸を上回っており、この2エリアは23区より多かった。バブル期のマンション市場の主戦場は23区ではなかったのである。また1990年の23区の平均価格と㎡単価は、8481万円、152.7万円で、2021年と比較すると戸当たりは2.3%、単価は19.1%高い。23区の最高値は翌1991年で8667万円、155.3万円にまで上昇しており、それとの比較では差はさらに大きくなる。現在の23区の価格はまだバブル期を大きく下回っている。バブル期の23区のマンションはコンパクト住戸が多く、実需の物件は非常に少なかった。当時は一般的な購入希望者が実需で新築物件を購入する場合、選択肢はほぼ郊外の物件に限られていた。現在のように実需中心のタワーマンションが23区内で供給されることはほとんどなかったのである。

2022年は3万4000戸とさらに増加
価格も高値を維持
 

 2022年も2021年と変わらず、マンション価格は高値を維持する可能性が高い。人件費などの高騰から建設コストが高止まりしている上に、コロナ禍にあっても用地費は下がっておらず、好立地でのマンション用地の確保は難しい状態が続いている。さらに、住宅需要の高まりから高値でも販売が堅調であり、今のところは価格が下がる要素はほぼ見当たらない。金利上昇懸念はあるが、新しい住宅のニーズは引き続き強く、2022年の市況は2020年夏以降の勢いを維持して当面は需給ともに堅調に推移することになるだろう。また、在庫が少なく、その処理に注力する必要がないことから、デベロッパーの多くは春商戦から新規供給を積極化させるため、この数年の傾向とは異なり、春商戦から大型物件の発売ラッシュを迎えることになりそうだ。都心だけでなく、周辺都市の中心部などでも人気を集めそうな大型・超高層案件が順次供給される。このような目玉物件のけん引によって、2022年の年間供給は3万4000戸とさらに増加する見通しだ。
 エリア別の内訳は東京23区1万4000戸(2021年比5.3%増)、東京都下3500戸(同19.8%増)、神奈川県7500戸(同12.9%減)、埼玉県4500戸(同1.1%増)、千葉県4500戸(同3.5%減)と、23区、都下、埼玉県で増加が見込まれる。

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