“コロナバブル”の正体―株高と住宅・不動産市場の行方(下)

コロナバブル”の正体―株高と住宅・不動産市場の行方(上)より続く

コロナ禍でも堅調な住宅とオフィス市場
来年以降の取得支援策と床需給にリスク


 30年半ぶりに3万円の大台に乗るなど、日本の株高も実体経済とかけ離れたものであることは間違いない。ただ、日本の住宅市場もコロナ禍にしては堅調だ。在宅時間が増え、より快適な住まいへのニーズが高まっているのだとすれば、住宅も、コロナ禍で好調な“モノ”経済の恩恵を受けているということになる。
 大手住宅・不動産企業の2021年3月期第3四半期までの業績が出揃った。住宅に関して言うと、期中を通じて新型コロナの影響を受けたにもかかわらず、根強い需要が確認されている。戸建て住宅は注文住宅が苦戦する中、郊外需要が顕在化した分譲住宅が業績を支えた。また、好調な米国や中国の住宅市場を両国に進出している日本企業がうまく取り込めたことも注目に値する。米国や中国の住宅が好調なのは“金余り”が要因だが、日本でも東京臨海部の新築マンションにおいて“億ション”の売れ行きが好調など投資家や富裕層の動きが顕在化している。一時落ち込んだ注文住宅も、昨年後半は受注の回復傾向が続き、今年1月の受注速報では各社軒並みプラスとなった。これも国内の高額所得層の動きが出てきているためと推察される。
 オフィスに関しても、空室率の上昇が懸念されているが、物件売却益の増加や、既存テナントが賃料の増額改定を受け入れたことなどから今期の業績は支えられている。既存テナントの賃料増額改定は、空室率上昇を考えると不思議な気もするが、コロナ禍で実体経済が二極化しているため業種によって事情が異なることや、都心のオフィス床需給がいずれ元に戻ってひっ迫すると見ている経営者がいるということなのかもしれない。
 問題は今後だが、日本の各デベロッパーは住宅とオフィスについては、今年も引き続き堅調との見通しだ。その根拠は、住宅については昨年末に与党が決めた住宅ローン減税の延長・拡充やグリーン住宅ポイント制度といった取得支援策だ。政府与党には新型コロナで傷んだ内需を立て直すけん引役として住宅に期待する声が強い。業界は市場環境としても世界的な低金利や株高による資産効果が住宅取得を後押しすると見込んでいる。ただ、政府による取得支援策も時の経過と共にそのインパクトは衰える。来年以降も毎年インパクトのある支援策が打ち出されるとは、財政問題を考えると想像しにくい。オフィスについては、空室率の更なる上昇という懸念もあるし、2021年、2022年の新規供給は20万坪未満と少ないが、2023年には67万坪の大量供給が見込まれている。その点をデベロッパーとしてどう見ているのかが判然としない。また、在宅勤務の普及でオフィス床需要が本当に減るのか、あるいは1人当たり面積を増やすことになり、逆に増えるのかという判断も現時点では「不能」とのスタンスが目立つ。

“金余り”はコロナ収束と共に解消か
低金利のゆくえは依然不透明なまま

 
 では、“コロナバブル”としての金余り現象は今後どうなるのか。金余りの裏側にある財政悪化が、いずれ金融危機を招くのではという不安は当然ある。IMFも、危機に対応した各国の巨額の財政出動は評価する一方で、中期的には財政悪化への対処(ソフトランディング)が必要になるとも指摘している。目下のところ、GDPに対する国別の債務比率は日本が258%と突出していて最悪、アメリカが128%、ドイツは70%、中国が65%となっている。
 ただ、今回の金余りの最大の特徴は、従来型の中央銀行による金融緩和というよりも、政府による現金の直接給付というシンプルなところにある。そして、世界の富裕層がレジャーにお金を使う機会を奪われ、手元資金が潤っているという点にあるのだとすれば、金融破綻を心配しなくてもコロナの感染さえ収束すれば自然に解消していくと見ることができる。その世界のコロナ感染者数は、ワクチン接種が行き渡る今年中には収束し始めるという見方が有力だ。
 もっとも、住宅・不動産市場に大きな影響を与え続けている低金利が今後どこまで続くのかは、今回の世界的財政出動でいっそう不透明になった。前出の北井義久氏はその点について、「先進国では財政悪化は大した問題にはならないだろう」という。その理由は「金利がゼロなので、新発国債の金利もゼロ。ということは財政負担もゼロだから、世界の先進国は今のうちに借金をして打てる対策は全部打っておいたほうが得と考えている」と説明する。ただ、ブラジルなどの後進大国で財政破綻が起きれば、それが世界的な金融の混乱を招く恐れはあると指摘する。
 先進国日本は今回の70兆円を超す財政支出(第1~3次補正予算)がすぐにどうということはないが、問題は発行した長期国債の借り換えをしなければならない10年後で、そのときにもし金利が3~4%にもなっていたら大変なことになる。逆に言えば、日本政府は今後も低金利(上がっても1%程度)を維持せざるを得ないわけで、とすれば住宅・不動産市場は今後も堅調が期待できるということか。

2021/3/5 不動産経済ファンドレビュー

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