不動産経済アーカイブ;「あの時はこうだった」東日本大震災⑦特集 東日本大震災被災地ルポ・仙台(上)


分譲マンションには目立った被害なし
 ―4/7の余震で賃貸3千室が使用不能

 3月11日に発生した東日本大震災で、震源に近い仙台市は震度6強を観測。その後4月7日の大規模余震(宮城野区では震度6強)など余震が頻発している。だが21日の段階で、仙台駅周辺の建物は外壁の剥がれやクラック等は見受けられるものの、建物の倒壊はゼロ。商店も多くが通常営業している。「79年の宮城沖地震の発生以降、耐震基準が高くなり一般のビルでも耐震性が向上した。袖看板の撤去も進んだ」(三鬼商事仙台支店・三浦聖一支店長)ことが大きな要因だ。
 マンションデベロッパー、サンシティが仙台市内および福島県内3カ所で分譲中の物件は、タイルの剥がれや棟の繋ぎ目のカバーが外れるなどの軽微な被害だけだった。また、過去に宮城と福島で分譲した物件はすべて何かしらの被害はあったが、構造躯体に重大な損傷がでた物件はない。同社が過去に分譲した14階建てのオール電化マンションで、7階から上のフロアの共用部の廊下側に設置している給湯器が、震動によりアンカーが外れて倒れた。「オール電化マンションは給湯器の設置方法を見直した方がいい。また当社に限らず、郡山市内の物件は損傷が激しい。地盤がゆるいため液状化しており、外構が数十センチ下がった物件もある」(安瀬裕一・事業部副部長)。
 仙台駅を挟んで西口(青葉区など)よりも東口(宮城野区、若林区などの方が被害が大きい。海に近付くほど地盤が軟弱であり、余震も大きかった。仙台市では若林区の旧耐震の物件が使用不能となっている。ただし分譲よりも賃貸マンションの被害の方が大きい。仙台市内を中心に426棟を管理する今野不動産は、3月11日の地震で宮城野区を中心に30棟程度が使用不能となった。地盤沈下により宮城野区幸町の30戸のマンションが傾いたほか、専用部に設置してある電気温水器が倒れたことによる水の被害が大きい。

プレミネンテパーク花京院


 仙台駅東口至近のマリモの賃貸マンション「プレミネンテパーク花京院」(09年築、写真)は1回目の地震で建物が使用不能となり、3月15日付で住民に対し強制退去を勧告した。「建物内部は壁が割れコンクリが崩れでている状態。ドアの変形もある」(地元不動産業者)。なお、同物件周辺の築年数の古いマンションには外壁の剥がれやクラックなどは見受けられず、物件によって被災状況が全く異なっている。
 3月11日の震災だけでなく、4月7日の大規模余震による建物被害も大きい。宮城県宅地建物取引業協会では、宮城県に対し民間賃貸住宅の空室情報を3月末までに5000室分提供。だが7日以後に再度物件確認を行ったところ3000戸に減った。「本震で弱っているところに縦揺れがきたため一気に壊れた。減った物件は宮城野区が中心」(大城秀峰・常務理事)。
 三鬼商事仙台支店によると、3月14日時点で市内の主要362棟のオフィスビルのうち、倒壊やフロア傾斜など使用不能となったビル(目視ベース)はゼロだった。外観上強いダメージが見られ、大規模修繕が必要とみられるビルは14棟で軽微な被害がほとんど。
 免震・制震構造の高層建築物はほとんど被害はなかった。森トラストが所有する「仙台トラストタワー」(青葉区)は制震構造を採用、構造面・意匠面でもほとんど震災の影響を受けなかった。内部もクラックはほとんどなく、キャビネットは棚が開いた程度で転倒はなし。免震構造を採用している仙台MTビル(宮城野区)は、建物を支える免震支承が半径23センチ移動した。
(2011/04/26 日刊不動産経済通信)

オフィス稼働率改善の兆し、復興需要で
 ―マンションモデルは再開、中古住宅活況

 震災を受けて、仙台では復興需要が活発化してきた。テナントビルの至る所でゼネコンの被災地復旧部隊の拠点がつくられており、ホテルはどこも満杯。森トラストの超高層複合ビル「仙台トラストタワー」の28~36階にあるウェスティンホテル仙台(客室数292室)では、「震災後、通常料金よりも割安の『復興支援特別プラン』を実施した。客室はほぼ満室稼働。損害保険会社など長期の利用が多い」(遠藤信幸・森トラスト常務執行役員仙台支店長)状況。
 オフィスビルの稼働率にも改善の兆しがある。三鬼商事の調べでは、仙台市のビジネス地区のビル空室率は2月末時点で20%。震災後は、オフィス仲介の相談件数が通常時の倍以上に増加。被災した若林区卸町などの工業団地からの移転需要が活発だった。三浦聖一・同社仙台支店長は「面積の大小にかかわらずかなりの数が成約できた。事務所修理の間の一時的な移転ニーズが多い。オーナー側も契約期間や解約予告期間を柔軟に対応するなど配慮している」。仙台ビジネス地区のオフィスの募集賃料の相場は、同支店の調べによると、昨年12月時点で月額坪当たり9167円。震災後も大きな変化はないという。「東京などから仙台へ新規に進出する企業が増えれば上昇するだろうが、そういう状況にはない。オーナーもテナントの足元をみることはしていない」(同)。
 森トラストの「仙台MTビル」は震災までの稼働率が70%だったが、仙台市の東部エリアからの移転需要を取り込み、今期は80~90%になりそう。また仙台トラストタワーの震災前の稼働率は50%だったが、今期中に70%への改善を見込む。遠藤常務は「トラストタワーは構造耐力上震度7まで耐えられるうえ、制震構造を備えている。企業はBCPのうえでオフィスの安心・安全を求めている。募集賃料は震災前と変えておらず、借り手も納得して入居してくれている」と語る。
 仙台市内の分譲マンションのモデルルームはGW時期から順次再開の見込み。大京は「ザ・ライオンズ定禅寺タワー」(青葉区)の販売を29日から再開する。他社が分譲している仙台駅前の完成済みの免震タワーマンションには震災後、集客が増えているとの情報もある。ただし福島県の新築市場は「原発事故の影響を見極める姿勢があり購入マインドが弱い」(サンシティ)ことから低調に推移するとみられるが、福島市といわき市の物件はいずれもモデルを再開している。「人員を増強して早期に売り切る」(同)考えだ。
 不動産売買で活況なのは中古住宅。被災者が市内の中古・新築戸建てやマンションを購入している。東急リバブルの袖山靖雄社長によると「1000万円台の中古マンションの取扱が急増している」という。仙台を所管する東急リバブル東北の予算達成率は全国各営業部門でトップとなっている。
 また、三井不動産販売東北の仙台店によると「戸建は2000万円まで、マンションは1000万円までの予算の人が多く、品薄状態だ。3月までは被災者が買い手の中心だったが、4月以降は自宅の耐震性に不安を感じる方からの購入相談が増えている」(元木稔店長)。なお国は、住宅が全壊した被災者に対し住宅再建支援のための「生活再建支援制度」を用意。建て直しだけでなく、新規の住宅購入でも最大300万円の補助が受けられる。元木店長によると「この制度を利用して購入する人も増えている」という。
(2011/04/27 日刊不動産経済通信)

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