コロナ禍なのに世界的株高が続いている。背景には財政支出による金余りがあるが、なぜ経済対策として支出されたお金が余るのか。一方、アメリカ、中国では余ったお金が住宅市場にも流れ込み、両国に進出している日本の住宅企業はそれなりに潤っているという。国内の住宅市場もこれまでのところ、コロナ禍の割には堅調だが、今後はどうなるのか。“コロナバブル”の正体と、住宅・不動産市場の行方を考える。
世界の金余りは総額1000兆円に
日本は一律支給と“3密回避”が原因
IMF(国際通貨基金)によると、新型コロナウイルスによる景気悪化に対する経済対策として世界各国が行った財政支出の総額は昨年末時点で約1400兆円にも達した。そのため、各国の公的債務は平均でGDPの97%を超え過去最悪の水準だ。一方、その余波というべきか世界の金余りの総額が約1000兆円と言われる。国別では日本で100兆円、中国で200兆円、ヨーロッパで200~300兆円、アメリカで300兆円といったところらしい(北井義久日鉄総研チーフエコノミスト)。
では、経済対策として支出されたお金がどうして金余りを生むのだろうか。それは、多かれ少なかれ、財政支出が個人や企業に対し“一律”で行われているためである。当然、高額所得者や余裕のある企業ほどもらったお金が余る。その証拠に、日銀資料では日本の法人預金総額は昨年から今年にかけて50兆円増加、累計では300兆円にも達している。一方、個人の貯蓄率も昨年1年間で約10%から25%へと跳ね上がっている。
もっとも財政支出だけでは、これだけの金余りは説明できない。北井氏によれば、コロナによる3密回避で、富裕層による高額消費が抑えられているからだという。どういうことか。実体経済がコロナ禍で二極化し、人の移動を伴うサービスは壊滅だが、モノやその移動に関するビジネスは逆に活況を呈しているというのだ。
反対に人の移動を前提とする宿泊業、鉄道業、航空業界は落ち込んだまま。そして、同じ宿泊業でもインバウンド向け、同じ鉄道でも在来線よりも新幹線、航空業界は国内線より国際線というように移動距離が長いほど需要がなくなってしまい元に戻っていない。その結果、富裕層の手元にお金がたまり、それが株や高級住宅市場に流れ込んでいる。
“コロナバブル”の正体―株高と住宅・不動産市場の行方(下)に続く
2021/3/5 不動産経済ファンドレビュー