底堅い物流施設やレジに重点投資続ける―ヌビーン日本法人・渡邊氏に戦略を聞く
Shu Watanabe

米国の資産運用会社、ヌビーンが日本市場で存在感を増している。米国教職員退職年金・保険組合(TIAA)が母体で、運用資産残高は昨年9月時点で1・1兆ドルに上る。日本ではコロナ禍でも底堅い賃貸住宅や物流施設などに重点投資する。日本法人の不動産部門責任者である渡邊周作氏に戦略を聞いた。

 ―日本の不動産への投資機会を増やしている。

 渡邊氏 日本では2016年から年に2億~3億米ドルの投資を続け、一昨年に金融庁の事業認可を取った。これまでに銀座のオフィスや小田原の物流施設、東京と大阪の賃貸住宅などを購入した。今後も同程度のペースで投資を続ける。

 ―日本における投資の基本姿勢について。

 渡邊氏 値動きのある商品に対して一定額を毎年コツコツと投資するドルコスト平均法で、安定感のあるポートフォリオを作っていく方針だ。

 ―コロナ禍で日本の不動産市場が再評価された。

 渡邊氏 良い面と悪い面があるだろう。コロナ禍の打撃は大きいが、政府の金融政策で逆に資産価値が上がった不動産もある。コロナの感染が広がる前から店舗やオフィスの需要が減退する一方、住宅や物流施設はコア資産になりつつあった。コロナ禍で働き方や生活様式も変わり、そうした傾向がより鮮明になった。

 ―各アセットの価値をどう評価する。

 渡邊氏 店舗やオフィスはテナントの引き合いが弱まり、リース活動が停滞している。一方、集合住宅と物流施設は相対的にも底堅さを発揮して投資が増え、特に昨年の第4四半期以降に価格が上がってきた。時価総額の大きいリートの銘柄も、かつてのオフィスや商業施設などから物流施設や住宅、データセンター、再生可能エネルギー施設へと移り変わっている。

 ―コロナ禍で生活様式がどう変わった。

 渡邊氏 ITなどテクノロジーの利用拡大に弾みが付き、買い物や社会生活、働き方が大きく変わった。その結果、立地が良く機能的な住宅や物流施設の需要がさらに強まった。

 ―ホテルの不振は底を打ったとの見方がある。

 渡邊氏 当社は原則としてホテルには投資しない方針だ。ただ、オフィスや商業などの複合施設の一部としてホテルが入っている場合はその限りではない。

 ―来年にかけての短期の市場見通しを伺う。

 渡邊氏 日本では集合住宅や物流施設に投資の軸足を置いてきたし、その選択は間違っていなかったと考えている。ただ今後はそれら2つのアセットも立地や建物の質などによって運用状況にバラつきが出てくることが想定される。コロナの感染が収まれば政府の支援措置が今よりも削られ、施設のテナントである個人や企業はそれまでとは違う大きな変化を求め始める。その結果、資産の価格や稼働状況が変わってくる。

 ―住宅や物流施設への投資にもリスクはある。

 渡邊氏 両アセットへの投資需要は強い。だからこそ投資する側が価値判断を見誤る危険性があることを常に意識している。例えば人気のエリアから1区画しか離れていないのに、不動産としての評価が全く異なるといったケースも実際にある。

 ―日本で事業を行う上での課題と目標は。

 渡邊氏 日本では少子高齢化が加速し、企業文化や各種規制も複雑だ。次の成長分野を探す必要がある。具体的にはシニア向け住宅や学生寮、社宅などは成長する可能性が高く、積極的に投資したい。(日刊不動産経済通信)

 

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