国土交通省は、建替え時の容積率緩和や敷地売却が可能となるマンションの基準を定めるため、有識者を交えた「要除却認定基準に関する検討会」を開催し、改正マンション建替円滑化法により新たに対象として追加された4項目について、認定される上での考え方が示された=表。検討会は8月までに計3回の会合を設け、基準案をまとめる。
昨年6月に公布された改正マンション建替円滑化法では、これまで耐震性が不足しているマンションにのみ認めていた敷地売却を外壁剥落の危険性や火災への安全性に懸念があるマンションにも認めることを規定した。これらの要件を満たす団地型のマンションは敷地分割事業の実施も認める。耐震性不足であれば建替える際の容積率緩和の要件にもなっていたが、外壁剥落や火災の安全性に懸念があるマンションのほか、配管設備の腐食やバリアフリー性能の不足が生じているマンションも対象に加える。こうした「要除却認定」の対象拡大は12月にも施行する。団地分割事業は2022年4月の施行を見据える。
初会合では、対象ごとに判断基準の考え方を示し、有識者と検討した。外壁剥落の基準は目視の状況から一定の鉄筋腐食が進んでいることとする。RC造マンションを現地調査した結果から、一定の鉄筋腐食が発生しているときに観測された劣化の状況がデータとして得られており、そのグレードや調査個所数を踏まえた判定式をつくり基準に達しているか判定する。
火災への安全性に関する基準は、建築基準法の防火・避難関係規定に不適合であり、簡易な修繕で基準に適合させるのが困難であることとした。具体的には、避難階に通じる直通階段の設置や、15階以上に通じる避難階段の特別避難階段への強化、非常用昇降機の設置、非常用侵入口の確保などで、いずれも大規模な改修が必要になったり、新たな構造物を設置する必要があるケースとなっている。
配管設備の腐食に関しては、スラブ下配管方式の排水管で漏水が生じ更新が必要となっているものとし、複数の箇所で漏水が生じていることを基準とした。バリアフリーの基準は、建物出入口から集会室や各住戸に至る経路のうち、▽廊下の幅が120㎝以上、▽傾斜路の幅が120㎝以上、▽傾斜路の勾配が12分の1以下(高さ16㎝以下は8分の1以下)、▽3階建て以上のマンションでエレベーターの設置がある、▽エレベーターのかご、昇降路の出入口の幅が80㎝以上、▽エレベーターの乗降ロビーの幅・奥行きが150㎝以上|のいずれかを満たさないものがあることとしている。
有識者との意見交換の中では、違法建築の状態にあるマンションの対応についての意見が挙がり、国交省は「耐震性不足のマンションでは耐震診断の結果で基準に適合すれば要除却認定としており、違法建築や既存不適格の状況かなどは必ずしも突き詰めず、今回検討する基準に適合するかどうかで判断する」と回答。また、基準への適合の判定について、建築士や建築設備士など対象に応じた有資格者であり、講習を修了していることなどを条件にすることを示した。
2021/6/5 月刊マンションタイムズ