東急・西村沿線開発事業部長に方針聞く
東急は、新築分譲マンション「ドレッセ」シリーズ初の超高層「ドレッセタワー新綱島」を始め、東急線沿線エリアで注目を集めるタワー物件を相次ぎ分譲する。住宅開発を担う沿線開発事業部長の西村隆徳氏に現在の市況や販売進捗状況、今後の方針などを聞いた。
―現在のマンション市況は。
西村氏 グループの鉄道事業を基盤に、駅という顔を点として、路線で結ぶ長期視点の面的な開発を行っている。当社の持分では、年間で500~600戸規模の供給となりそうだ。22年は、沿線の駅直結や近接立地のタワーマンションの販売が中心となる。その場所でしか享受できない付加価値のある物件を供給していくというメッセージを伝えやすい状況だ。販売中の物件は総じて堅調に進んでいる。今後は、金利の影響が大きく見通しは難しいが、マーケットの好調は23年上期頃まで続くことを期待している。
―沿線で開発が続くタワーマンションについて。
西村氏 21年に販売を開始した横浜市の「ドレッセタワー新綱島」(252戸)は、坪400万円を超える新たなマーケットを作る価格設定にしたが、第1期は即日完売と想定以上の人気を集めた。新線新駅直結の他にない立地で、これまで中心ではなかった東横線の綱島駅東口側のまちづくりという観点からも期待感を集め、好発進した。
鶴見川流域でも、新たな賑わいを作っていく。これから販売を開始する川崎市の「ドレッセタワー武蔵小杉」(160戸)は、駅の南側では唯一、目の前の開けた眺望を確保した立地で、上方修正した目標を更に超える好反響を得ている。親しみやすい形で実質CO2フリー電力の導入を始めSDGsなどのメッセージを伝え、和モダンによる空間のモデルを設けて多様な価値観の豊かな暮らしを提案する。販売価格は「新綱島」を上回る予定で、検討中の顧客の反応とキャッチボールをしながら決めていく。4月中旬頃にモデルを開設する予定の町田市の「ドレッセタワー南町田グランベリーパーク」(375戸)は、駅直結の70年の定借マンション。広大な商業施設やオープンエアの公園を、冷蔵庫や庭のように利用できる稀有な環境に開発する。行政と連携して道路も含めて大きな投資を行ってきたエリアの1番の物件として値付けを行い、居住者にそれ以上の価値を提供する物件にする。しっかりとした価格を付けて、将来的に地域へも価値を還元していく。更に、相鉄不動産と事業比率50%ずつの共同事業で、横浜駅直結の「ザ ヨコハマ フロント タワー」(459戸)も販売する。
―今後の事業展開について。
西村氏 用地取得の環境は厳しく、建築原価も上昇している。それでも、低金利やローン減税を背景に、パワーカップルを始めとした一般の消費者の購買力は維持されていて、渋谷など都心の高額物件には海外の資産家や投資家も注目する環境が続いている。東急線沿線は、以前は社宅や寮だった土地などもあり、賃貸マンションの開発も続けていくことで若い世代の流入も図りながら事業を続ける。東横線の自由が丘や中目黒、大井町線の戸越公園や田園都市線の鷺沼、藤が丘などで街のインフラを新たに整えていく事業に、積極的に参画する。乗り入れ先の鉄道沿線も、準沿線として狙っていきたい。沿線郊外部では、「ネクサス構想」として、沿線で暮らす人が起点となり、職、学や遊も含め「住む」にとどまらない魅力付けに取り組んでいく。中規模の物件でも、街にある既存の施設の活用や新しい施設の整備で、付加価値のある開発を続ける。環境配慮を始めSDGsなどの価値も、親しみやすい形で伝えていく。