残置物処理モデル契約条項をどう見るか⑤ 最近の注目判例(中)法定更新による契約上の更新料支払義務が否定された事例ー中島成弁護士

残置物処理モデル契約条項をどう見るか④ 最近の注目判例(上)より続く

法定更新による契約上の更新料支払義務が否定された事例

  ~東京地方裁判所令和 2年11月19日判決~ 

【事案】

 控訴人(以下「保証会社」)は、控訴人(以下「賃借人」)の建物賃貸借契約の保証をし、また、賃貸借契約更新の更新事務手数料(以下「本件手数料」)も保証した。 

 保証会社は、未払賃料、本件手数料を代位弁済したとして、賃借人に対し、求償金35万0058円及びこれに対する遅延損害金の支払を求めた。

 原判決は、賃借人が未払賃料の支払義務を負担していたことは認められるが、更新料及び本件手数料の支払義務が生じていたとは認められないとして、保証会社の請求につき、未払賃料16万0258円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める限度で理由があるとしてこれを認容し、その余の請求を棄却し、保証会社が控訴した。

  本件賃貸借契約は、契約期間平成27年3月1日から平成29年2月28日まで(2年間)、賃料月額17万9000円、共益費月額5000円、本件賃貸借契約の合意更新又は法定更新があった場合には、賃借人は、アレップス(賃貸人)に対し、新賃料の1か月分を更新料として支払う(23条)、とされている。また、賃借人が契約の更新を希望する場合は、期間満了の1か月前までに、その旨をアレップスに申し出るものとし、賃料及び共益費の改定その他に記載の契約更新に関する条項及びアレップスが提示する条件変更などを被控訴人が承諾履行することにより再契約することができるとされている。

 保証会社は、平成29年7月31日、賃借人において本件賃貸借契約に基づく未払賃料16万0258円、本件更新料17万9000円及び本件手数料1万0800円が発生していることを前提に、アレップスに対して代位弁済の名目で合計35万0058円を支払った。

 賃借人は、本件賃貸借契約の期間満了後、平成29年3月27日まで本件建物を使用収益し、同日、アレップスに対し、本件建物を明け渡した。

【裁判所の判断】

 アレップスは、賃借人に、平成28年12月頃、本件賃貸借契約を更新するかどうか確認し、賃借人は更新しないと回答し、期間満了から本件建物の明渡しまで1か月程度の猶予を求めていたから、借地借家法26条1項  による法定更新は認められないものと解される。

 賃借人が、賃貸借契約の期間満了前に更新しない意思を明示し、実際に、本件賃貸借契約の期間満了時から1か月が経過する前の平成29年3月27日に本件建物を明け渡していることからすると、本件においては、賃借人が行うべき明渡しが1か月程度遅れたにすぎず、賃借人において、本件賃貸借契約の継続を前提として本件建物の使用収益を継続していたものとは評価し難い。

 したがって、本件においては、借地借家法26条2項(法定更新)の「賃借人が使用を継続する場合」に該当するものとは認められない。

 保証会社は、期間満了後も使用継続されているにもかかわらず更新がされないことになると、法的安定性を欠き、賃貸人にとって不利であると主張するが、建物賃貸借契約の期間満了後も賃借人が当該建物を明け渡さなかった場合に賃貸人が被る不利益と、賃貸借契約の更新を認めるかどうかとは別個の問題というべきであるし、本件においては、あらかじめ期間満了前に、賃借人が、アレップスに対して本件賃貸借契約を更新しない意思を明示していたのであるから、本件賃貸借契約について更新を認めないとしても、法的安定性を欠き、賃貸人にとって不利になるということはできない。

 したがって、本件賃貸借契約の更新は認められず、本件更新料及び本件手数料の支払義務は発生しないから、保証会社の賃借人に対する本件更新料及び本件手数料についての求償金請求は認められない。

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