不動産投資家の意欲に衰えなし―オフィスの多様性に資金が流入(上)


新型コロナウイルスのワクチン接種が進んできたが、全国の感染者数は1日で2万人を超え、東京都は5000人を突破するなど経済正常化に向けて予断を許さない状況が続く。飲食店の酒類提供の停止だけでなく、このまま感染爆発が収まらなければ商業施設やレジャーなどへの営業制限が再び強まる可能性もある。しかし、投資家による不動産に対する興味は依然として強いままで投資姿勢は衰えていない。


2020年は商業施設、オフィスビルに逆風
注目オフィスはコロナ禍でもテナント誘致

 ニッセイ基礎研究所と価値総合研究所が共同で今年5月20日に日本国内の不動産投資市場規模を調べたところ、商業施設の「収益不動産」は約71.1兆円とし、「投資適格不動産」は約50.7兆円と推計している。
 同調査によれば、商業施設の収益不動産ストックに対する年間の取引量は、2007年のファンドバブル時に約1.2兆円に達し、リーマン・ショックと東日本大震災の後、2015年・2017年も取引額は1兆円を上回ったが、コロナ禍を受けて2020年は約0.4兆円(前年比37%減)と大きく目減りした。このうちJリートの占める割合は収益不動産が4.7%となり、投資適格不動産が5.0%としている。
外資勢による国境をまたいだ取引について見ると、2017年に42%を占めていたものが、2020年度は6%まで低下した。昨年は、緊急事態宣言で大型商業施設への休業・時短営業要請などで売り上げが低迷し、投資家の様子見姿勢が強まったことが要因だとしている。
 日本百貨店協会の「全国百貨店売上高概況」を見ると、上半期累計(1~6月)の伸び率は1割ほど増えているが、コロナ危機前の2019年と比べると27.3%減と3割近く落ち込んだまま。同調査をエリア別に見ると、札幌・仙台・東京・横浜・名古屋・京都・大阪・神戸・広島・福岡の10都市平均が0.4%増加したが、地方が6.5%減となっている。
 都市と地方の格差が広がっているが、商品ごとに好不調もある。身の回り品や雑貨、食料品の3つの品目で前年実績を上回り、株高による資産効果で高額消費の増勢が続き、巣ごもり需要から菓子類や酒類、家電、家具などの商品も好調に推移している。
 しかし、日本百貨店協会の村田善郎会長は8月13日、コロナ対策分科会から「前例にとらわれない強い対策を求める提言が出されたことを踏まえ、百貨店業界においてもさらに一段と強化した取り組みの必要性を認識している」とコメントを出した。これまでの対策を総点検するという。足元の感染爆発が状況をさらに悪化させないか。百貨店の当事者だけでなく、商業施設運営者はさらに売り上げに響きかねない状況が迫っていると危機感が募る。
 商業施設に限らずオフィスビルにも逆風が吹く。三鬼商事が8月12日に発表した東京都心5区の7月のオフィス空室率は6.28%(前月比0.09ポイント上昇)と17カ月連続で上がっている。コロナ禍で進むオフィス集約の影響で、大型解約などが響いている。不動産大手が運営する大型ビルで解約が相次いだもようだ。既存ビルの空室率が6.20%とほぼ横ばいなのに対し、新築ビルは11.42%(前月比1.57%上昇)と2桁に達した。不動産投資家の意欲に衰えなし―オフィスの多様性に資金が流入(下)へ続く

2021/8/15&25 不動産経済ファンドレビュー

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