改正マンション管理適正化法・マンション建替円滑化法が完全施行 管理組合は主体的に適正管理を 所有者責任を考え廃墟化防ぐ努力を 戎正晴弁護士インタビュー①

 マンション管理適正化法の改正では、改正前の第四条で「管理組合は、マンション管理適正化指針の定めるところに留意して、マンションを適正に管理するよう努めなければならない」と規定していたところ、「マンションを適正に管理するよう自ら努めるとともに…」(改正後は第五条)と、新たに「自ら」を記載した。この「自ら」が、非常に重要なポイントで、管理組合は今まで主体的に適正管理に取り組んできたのか、そうではないマンションもあるのではないか、という問いかけになっている。管理組合は「管理会社に管理業務を委託しているから大丈夫」と思うのではなく、適正管理により主体的に取り組み、所有者の団体として所有者責任を果たしてほしい、という思いを込めて、「自ら」が加わっている。

 改正前の第四条では、管理組合はマンションを適正管理する義務を公共に対して負っていることを示していた。マンションは都市の中の巨大な建造物であり、適正に管理する責任が果たされなければその都市や次世代に大きな影響を及ぼす。だから、個人の住宅でありながら国が適正化指針で管理の水準を示し、その水準に従って管理することを求めている。戸建て住宅が廃墟化し外部不経済を与える場合は、空家等対策特別措置法に基づいて特定空家として判断し、最終的には行政代執行で解体するという対処を行うが、マンションが特定空家の状態になってから対処していては周辺への影響がすさまじい。マンションは適正管理義務を負っているが故に、特定空家化を予防するための努力をする必要がある。管理組合も所有者責任を考え、もっと主体的に自らのマンションの行く末を不良ストックにしない、まさに特定空家化しない不断の努力をしてほしい、というメッセージになっている。

マンションが廃墟化して困るのは自治体 推進計画は作成されるべきもの

 また改正後の第五条は「自ら努めるとともに、国及び地方公共団体が講ずるマンションの管理の適正化の推進に関する施策に協力するよう努めなければならない」とも記載した。ここには、地方自治体は独自の施策であるマンション管理適正化推進計画(以下、推進計画)を積極的に作成しなければならないし、管理組合も国や自治体の取り組みに協力しなければならない、という意味を込めている。

 2018年には滋賀県野洲市で廃墟化したマンションを行政代執行で解体する事例が起きた。10戸程度のマンションだったが、それでも解体費用は1億円を超える。都市部の郊外や地方であれば、解体した後の敷地を売却しても解体費を回収できない可能性も高く、マンションが特定空家の状態になることは行政の負担が非常に大きい。マンションが廃墟化して一番困るのは地元の自治体になる。

改正法では推進計画は自治体が任意に作成できるとしているが、野洲市の例を考えると、自治体は推進計画を作成して推進計画に基づいた自治体独自の適正化指針をつくるべきだし、それに沿った管理を管理組合が行うようにしなければならない。また推進計画をつくることで、管理組合に対してこの地域や次世代に廃墟を残さないようにマンションを適正に管理するよう積極的に発信していくべきだ。

管理組合は主体的に適正管理を 所有者責任を考え廃墟化防ぐ努力を 戎弁護士インタビュー②へ続く(予定)

2022/4/5 月刊マンションタイムズ

マンションタイムズ
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