シリーズ;不動産の”正直営業”はどこまで可能か??⑤ 完全紹介営業、おとり広告に加担せず 初日の営業はヒアリングのみ 正直不動産「モデル」の鈴木・誠不動産社長
大谷アキラさんのイラスト

NHK総合テレビでドラマ「正直不動産」(小学館)の放送が5日からスタートした。山下智久さん演じる口八丁・手八丁の不動産営業マン・永瀬財地が、徐々に「正直な」営業によって頭角を表していく。そのストーリーさながら、それまでの営業手法に疑問を感じて「正直営業」を実践するようになった誠不動産(東京・渋谷)の鈴木誠社長に話を聞いた。正直営業は果たしてどこまで可能だろうか。

シリーズ;不動産の”正直営業”はどこまで可能か??④より続く 

誠不動産の営業については

 反響営業は一切行っておらず、紹介営業のみだ。当社はポータルサイトはどことも契約していない。ネットの反響がないので紹介以外に集客方法はない。ポータルサイトは悪意がなくてもタイミングによって決まった物件が掲載されたままになってしまうこともある。一切のおとりを止めたいからそのようにした。そういうスタイルで誠不動産は12年間やってきた。賃貸営業のポイントは集客だが、私の場合はそこを紹介のみとさせていただいている。ネットやテレビを見られただけの一見さんはお断りしている。営業は全部自分一人で行っている。自分が見て納得できる本当にいい物件を探してそれを紹介する。お客さんには著名人の方もいらっしゃるので、社員を増やすと個人情報の漏洩リスクが高まる。だから営業を増員する予定もない。内見はオンラインもあるだろうが、私は部屋に「気」があると思っている。それが物件の良い・悪いの重要な判断材料になる。実際に内見することが大事だ。

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 「いい物件」の条件は

 ①日当たりがいい、②自分が住めるかどうか(家族など、大切な人を住まわせたいかどうか)、③物件を見てピンとくる、④住んだ後にいいイメージが湧く これを「誠不動産4箇条」としている。中でも日当たりが最も大事だ。どれも大切な事なので。一つでも条件から外れると弊社では申し込みは取らない。

 誠不動産のオフィスは落ち着いた雰囲気だ

 当社には一般的な不動産店舗にあるような図面のファイルはない。営業のやり方として、図面を見せてすぐ物件の案内には行くわけではないからだ。まず店に来ていただいて、どのような物件に住みたいか。そしてどういう生活をしたいか、といったことを1時間ぐらい掛けてヒアリングする。まずは入居後の生活を具体的にイメージしていただくことが大事だ。初日はそれを聞いて終わり。その後私が物件を探して後日内見という段取りだ。

 反響営業ではすぐ逃げられてしまいそうな営業スタイルだ

 すぐに決めたいと思っていると、他に逃げられると思ってしまうだろう。だが家の住み替えは、人が次のステージへ進むための大きなイベントだ。そのような大事なことをものの2、3時間で決めようということこそ無理がある。私は営業として、この人がどういう家に住みたいのか、しっかりイメージして、人となりも見させていただいて、この人にはこの物件がいい、と言えるようにしたい。案内している物件の賃料帯は5万円のワンルームから100万円以上の高級コンドミニアムまで様々。エリアも都内に限らず埼玉や神奈川、千葉まで出掛けることもある。

  

 物件探しはどのように

 主にレインズとアットホームだ。レインズ は朝7時にログインできる。私は毎朝7時前には事務所にいて、7時きっかりにレインズ にログインして新着の物件を探す。そうすれば必ずいい物件がある。スピード感はとても大事だ。もちろん20年不動産営業をやってきたから、仲のいい管理会社がたくさんあって、そこから未公開の情報を教えていただくこともある。ただしこのようなルートがなくても、物件探しはレインズとアットホームが基本だ。売買と違って賃貸は殆ど表に出るからだ。

 入居者に困りごとがあったら夜中でも飛んで行くとか

 私が自信を持って薦めた物件に住んでもらって、そこで何か不都合があれば、それは自分の責任だと思うようにしている。夜中に鍵を無くしたとか、水漏れというケースでも連絡があれば、お客さんのところへ駆け付ける。夏場にエアコンが故障したとの連絡があった。管理会社からは3週間待って欲しいと言われて、困ったお客さんから私に連絡があった。そこで私は家電量販店へ行き、冷風器を買ってお客さんへ届けたこともある。そもそもこうしたトラブルに対処するのは管理会社だが、そこも含めて自分が紹介したのだから、できる限り対応したい気持ちだ。

 喜んでもらって次に繋がる

 手数料を貰ってそれで終わりではない。住んでいただいてからがスタートだ。そこのゴールを履き違えると、仲介営業は楽しくないし、良い仕事はできないのではないか。ゴールの設定の違いが当社と一般的な不動産業者との違いだ。当社の場合は、ご案内したほとんどの方がリピーターになっている。お付き合いの長い方だと、既に6、7回仲介させていただいた方もいる。申し込み件数は月20件前後。当社は誰かの紹介がなければ受けてはいない。紹介の紹介も受けてない。身元も含めてどういう方なのか、把握した上で紹介をしなければダメだと思っている。仲介として大家と管理会社双方にとっていいお客さんを紹介したい。紹介営業は責任が重い。

 他の人も同じような営業ができるか

 自分ができているからできるはず。自信ややりがいを持って、気持ちよく仕事ができるはずだ。ノルマに縛られていたこれまでの会社に比べれば、今の方が成約の件数は多い。すぐに決めなければと考えず、肩の力も抜けて良い仕事ができていると思っている。目先のおカネのことを考えず、ゴールの設定の仕方を含めて、いい物件を責任を持って紹介すると腹を括れるかどうかだ。気持ちの問題だと思っている。

シリーズ;不動産の”正直営業”はどこまで可能か??⑥ へ続く

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