シリーズ;不動産の”正直営業”はどこまで可能か??⑥ ドラマの「不動産考証」を担当、正直不動産ブームは追い風 REDS不動産流通システム 深谷十三社長
REDS不動産流通システム 深谷十三社長

 

NHKテレビドラマ「正直不動産」の第3回が放送(4月19日)された。NHKには消費者からたくさんの反響が集まっているという。漫画原作の取材とドラマの考証(不動産考証)および不動産監修で協力しているREDS不動産流通システム(東京・中央)の深谷十三(ふかや・じゅうぞう)社長に話を聞いた。果たしてドラマのような「正直な営業」はどこまで可能だろうか。

NHKでドラマ「正直不動産」がスタートした。反響は上々のようだ

深谷氏 当社はドラマだけでなく漫画の連載を含めて「正直不動産」を全面的にバックアップしている。ドラマの「正直不動産」のエンドロールでもクレジットされているが、私がドラマ全体の「不動産考証」を、当社社員である堤延歳(つつみ・のぶとし)が取材協力という形で不動産に関する監修を行なっている。不動産考証というのは、事務所の様子や申し込みを貰ってきた営業に対する周囲の雰囲気であるとか、契約に至るまでのやり取りの手順などを考証している。たとえば、重要事項説明を行なって売主・買主双方から理解を得てから契約し、それが終わってから手付の受領といった一連の流れに違和感がないかどうかなどだ。視聴者の一定数は不動産業界の人だろう。業界の方が見てもリアリティを感じてもらえないといけない。そして消費者の方には書類に印鑑を押すシーンなどはしっかり見ていただきたい。不動産を売買すれば誰でもハンコを押す経験はするが、他の人がそれをしている場面など見ることはない。不動産の売買は、日用品の購入とは違って一生の間に一度あるかどうかという重要なイベントだ。消費者にとって改めて学ぶ機会がないことが、不動産売買を難しいものにしている。

 
 「正直不動産」の存在をどう評価するか。

 深谷氏 ドラマは第十話までありこれからどんどん面白くなる。初回はサブリース、第2回はおとり広告・媒介契約における囲い込みがテーマとなった。毎回新たなテーマにフォーカスし、不動産の売買や賃貸借契約をする上で知っておいた方が良い知識がどんどん出てくる。消費者だけでなく、不動産業者にとっても参考になるはずだ。だから、ぜひ観て欲しい。
 不動産売買の現場は、これまでテレビなどであまり描かれたことがない。だからこそ一般の人が目にする機会など殆どないところだ。皆さんがドラマみて、「それはないよなぁ~」などと感じるところがきっとあると思う。そういう消費者の声を、我々不動産関係者が業界の体質改善のきっかけにしていければいいと思う。また、普段から消費者を蔑ろにしている一部の業者にとっては迷惑な本・ドラマであるかもしれない。そういう業者からも突っ込まれる余地がないよう、不動産考証・演技指導はしっかり行わせていただいたつもりだ。
 「正直不動産」のブームは当社にとっては完全にプラスだ。もちろん当社は正直にやっているから(笑)。だが、改めて考えると、あえて「正直」を全面に出していることが、不動産業界に問題を突き付けているのではないだろうか。本来、「正直」なんて当たり前のことだ。

 業界の問題をどう見るか

 深谷氏 私が不動産業界で最も問題だと思うことは、執拗に両手仲介を追い求めるために行われる「囲い込み」だ。大手不動産業者が行う売買仲介のほとんどが両手仲介になっている。彼らの平均手数料率が概ね5%近くになっていることが証左だ。現在の宅建業法では、不動産業者は成功報酬としてしか収入が得られない。物件査定とか案内とかでも相応の労力が求められるのだから、出来れば何らかの対価が欲しいところだ。しかし今のルールは成功報酬として求める仲介手数料だけだ。不動産業者も成約までに様々な費用がかかるのだから、収益が二倍になる両手取引したくなる気持ちは否定できない。だが両手仲介にしようとするがための「囲い込み」は問題だ。もちろん自然に売る方と買う方が同じ不動産会社に来ることはあり得る。そこは何も問題はない。だが絶対に両手にせんがため、他の業者に物件を扱わせないというのは消費者利益に反する。

 断りの文句は 

 深谷氏 コロナ禍となってから「コロナだから会えません」とかの言い訳が増えた。あるいは、予め売主に対して、「もしも他社から問い合わせあっても、はたしてどんな方なのか分かりませんので、なるべくお断りを入れるようにします」などと説明すれば、一般の売主は良心的な業者だと思って囲い込みを容認してしまうかもしれない。それこそが囲い込み問題の闇の深さだ。これだけではない、テクニックはますます巧妙になっている。「売主の希望」以外にも、申し込みを入れてから契約までの間、時間をできるだけ長く引っ張る。その間に自分のところで買主を一生懸命探している。そもそもレインズの役割自体が、物件情報を一社に限定せず多くの業者に広く行き渡らせるためもので、相互に不動産仲介を成立させるための仕組みなのだから、それを否定するような動きをするのは間違いだ。

シリーズ;不動産の”正直営業”はどこまで可能か??⑦へ続く

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