シリーズ;事故物件を歩く⑤ ー特殊清掃事業者の倉庫から(下)
ふうせんの風 伊藤憲正社長

 シリーズ;事故物件を歩く④より続く

自殺や孤独死などが発生した住戸を第三者へ売買、あるいは賃借させる前に、残された入居者の荷物(遺品)の整理や、死体などの臭いを消すための「特殊清掃」を行うことが一般的だ。遺品整理と特殊清掃を行っている、株式会社ふうせんの風(さいたま市岩槻区)の伊藤憲正(いとう・のりまさ)社長を訪ねた。

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住人の遺体が発見された
(ユニットバス※事故物件)

 特殊清掃の現場とはどのようなものか。あるアパートの1室の特殊清掃前のビフォアの状態を、特別に写真(スマートフォンで撮影された現場の写真を撮影)で見させてもらった。写真・右はバストイレで、表面が爛れるように黒く濃く汚れている。住人の遺体が発見されたのはこの場所だ。一方で写真・左は遺体がない部屋で、表面上は綺麗だが、臭いは部屋全体に回っており、除菌・消臭のためにクロスや床材を剥がす作業を行っている。

―事故物件の現場について


伊藤氏 例えばこの部屋の写真(写真上)川のように真っ黒になっているのは、実は人間の体液だ。現場によっては部屋中この人間の体液が溢れている場合もある。死んだ後に発見されるまでの間、遺体は徐々に溶けて内部から体液が出てくる。その色は時間の経過や腐敗の進み具合とは関係なく黒くなる。この現場は賃貸アパートの1室で11月初旬に行ったところ。特殊清掃の依頼はアパートの管理会社からだ。この部屋を借りていたのは一人暮らしの70代の男性で、死亡推定から1か月後の発見となった。亡くなってからも管理会社を含めて誰からも気が付かれない。そこが孤独死の問題だ。  

居室は綺麗だが臭いがついていた

―死因について


伊藤氏 男性は風呂場で亡くなっていた。死因は衰弱死ということだった。体液で汚れている水回り以外の場所、例えば居室については問題ない(写真・左)。ただし臭いがついているので壁紙や床材は全て剥がすことになった。クロスなど臭いを吸収している住戸内のものはすべて剥ぎ取る。その作業も含めて臭いの根源を無くすことが特殊清掃の仕事。まず掃除をしてから臭いの根源さがしをしてそれを除去する。汚物処理と一緒だ。

―水回りについては


伊藤氏 できる限りリフォームを行わないで、特殊清掃後はそのまま使えるようにしている。今回の案件は特殊清掃に必要な特別な薬剤を用いて体液を除去し、臭いを消すとともに除菌を行っている。それで水回りは綺麗にした。処理した水分等をそのままユニットバスから流すと下水管などに影響があるのでそれは行わない。

―遺品整理の業務内容と費用について


伊藤氏 品数が少なければ5万円から、これが「ゴミ屋敷」にでもなると100万円ぐらいになるものもある。当社として過去最高額となったのが、数戸のアパート全てがゴミ屋敷だったもの。スタッフ5人で2週間掛かり、費用は280万円だった。遺品整理の金額の出し方は要したスタッフの人数、不用品の処分の量、さらに処分する品物は現場で仕分けるが、その数が多ければ多いほど仕分けの技術料が加算される。 

―遺品整理後の品物はどうするのか

 伊藤氏 遺品をゴミとして捨ててしまうよりも、ちゃんと仕分けしてまだ使えそうなものはリサイクルに回している。リサイクルすることでゴミの量を減らし、ゴミ処理代を抑えることで施工の金額を下げることもできる。仕分けができるとゴミ処理代が減る。電化製品の粗大ゴミや不燃ゴミなど、ゴミ処理のコストは結構掛かる。一方でリサイクルできるものも結構多い。当社は仕分けを行ったうえで品物の査定ができることが強みだ。ここ(写真)にあるのは 全てゴミとして捨てられそうなものをリサイクルしたものだ。日本国内にも需要はあるし、仮に国内で見られなくなった古い家電でもアジア諸国ではメイドインジャパンとしての需要がある。古物商免許業者だけのマーケットがあり、アジアに強い輸出業者もいる。海外の需要があれば海外に流せるし、国内でも流通させることができる。

―特殊清掃の技術について


伊藤氏 当社は一般社団法人・特殊案件施工士協会(福岡県、宮田昌次会長)に加盟している。同協会は特殊清掃のプロフェッショナルを育成し、広く特殊案件施工士を斡旋することを目的とした全国組織だ。特殊清掃のプロとは、特殊清掃、遺品整理、生前整理、残置物施行の4つの業務と、エンバーミング、グリーフケアなどの関連事項について専門技術を身につけた者と協会では定めている。私は協会の関東支部長としても活動している。協会を立ち上げた人物はアメリカで「事故現場清掃士」として修業を経て、20年以上前に日本に特殊清掃を持ち込んだ、いわば業界のパイオニアだ。

―管理業者やオーナーにとって、いい特殊清掃業者の選び方は


伊藤氏 特殊清掃業者は施工技術がピンキリだ。言ってしまえば、何もできない・何もしない自称・「特殊清掃業者」が増えている。そこを見極めるには、現場の立ち合いの際に自分の身を守るために防護服・防護マスクを行って、人が立ち入るときでもしっかり注意ができる人であるかどうか、チェックしてみてはどうか。清掃前は病気などの感染リスクがあるので、最低限こうした装備はする。普通の服で現場に立ち会う人は自分が感染したらダメなのに、なんて無神経なのかなと思う。あと立ち合いの際は作業工程をしっかりヒアリングすること。中途半端な施工では臭い戻りしてしまい、2次施工となってしまうケースがある。ただその場の空気を綺麗にするだけのために脱臭機を使うとか。臭いの根源を消さないので臭いが戻ってきてしまう。そういう業者も多い。

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