首都圏ほど多くはないが大阪圏でも複数の開発計画が動く。GLPは大阪府茨木市にアルファリンク、プロロジスは兵庫県猪名川町に大型のLMTを作る。センターポイント・ディべロップメントや東急不動産、東京建物、大和ハウス工業らも物流施設の建設に乗り出している。他の大都市と同様、大阪圏でも開発エリアが外縁に広がる傾向があり、新名神などの延伸に伴い京都や奈良、滋賀など府外に複数の開発計画が浮上している。CBREの高橋加寿子シニアディレクターは「新名神ができて山間部も開発適地になった。新名神と名神が合流する琵琶湖の南部が交通の要衝となり、これから施設の開発が増えそうだ」と予想する。
CBREによると2Qにおける大阪圏のLMTの空室率は前期比0・2㌽減の1・7%と、この6年で最低値になった。実質賃料も0・7%増の4050円と高い。高橋氏は「来年は近畿で施設の供給が減るので首都圏よりも需給がタイトになる」と展望する。 物流施設の売買市場にも活気が戻ってきた。好況を下支えするのはJリートや外資系ファンドらだ。CBREが集計した2Qの国内投資市場動向によると、物流施設への投資額は1330億円とオフィス(1630億円)に次ぐ規模になった。東京圏の物流施設の売買利回りは約3・5%と今やオフィスと肩を並べる。
JLLの谷口氏は「工業地の地価が上昇しているが、利回りの低下と賃料上昇で施設の売買価格も上がっている。このため不動産各社も開発に前向きだ」と現状を読む。物流不動産市場が熱を帯びるなか、慎重な見方もある。GLPの帖佐社長は「価格高騰の先には下落がある。金利政策の転換が物流に限らず不動産市場全体に大きな影響を及ぼす」としている。
物流施設の空室率は5%前後が需給均衡の分かれ目との見方があるが、現時点では首都圏と大阪圏はその水準を大きく下回る。物流不動産市場では当面、旺盛な需給環境が続く見通しだ。ただ右肩上がりだったEC化率は近い将来に頭打ちになることが予想され、金利上昇で潮目が変わる可能性もある。いつまでも活況が続く保証はなく、選ばれる施設とそうでない施設の優勝劣敗が進む。物流に関わる事業者には経済情勢と商流を的確に読む目がますます求められる。(日刊不動産経済通信)