(家賃支援給付金制度(1)―Withコロナの不動産運用ビジネス―より続き)
給付対象
(1)概要
給付金を受け取ることができるのは、次のすべてを満たす者である。なお、家賃支援給付金は1度しか受け取ることができない。
①中堅企業、中小企業、小規模事業者、個人事業者等
②2019年12月31日以前から事業収入を得ており、今後も事業を継続する意思がある
③2020年5月から同年12月までの間に、新型コロナウイルス感染症の影響などにより前年同月または同期間と比べて売上が減少している
④日本国内の他人の土地・建物を自らの事業のために直接占有して使用・収益し、その対価として賃料を支払っている
⑤2020年3月31日および申請日時点で、有効な賃貸借契約を締結している
⑥申請日の直前3カ月間の賃料支払実績がある
⑦申請日の直前1カ月以内に賃料を支払っている
それぞれの詳細や補足は以下のとおりである。
(2)①について
中堅企業、中小企業、小規模事業者とは、2020年4月1日時点で、次のいずれかを満たす者である*1*2。
(i)資本金の額または出資の総額が10億円未満であること
(ii)資本金の額または出資の総額が定められていない場合は、常時使用する従業員の数が2000人以下であること
ただし、政治団体、宗教上の組織または団体等*3は給付の対象外である。
(3)②について
2020年1月から3月の間に設立した事業者も給付の対象にする方向で検討されている(同年4月以降に設立した事業者は対象外である)。かかる者の申請要領は準備が整い次第公表される。
(4)③について
2020年5月から同年12月までの間に、1年前と比べて売上が減少しているとは、次のいずれかの場合である*4。
(i)いずれか1カ月の売上高が前年同月比で50%以上減少
(ii)いずれか連続する3カ月の売上高が前年同期比で30%減少
申請要領には、当該売上の減少が新型コロナウイルス感染症の影響によるものでないことが明らかであるにもかかわらず、それを偽って給付を受けた場合、不正受給として厳しく対応することがあると書かれている。かかる書き方からすると、「新型コロナウイルス感染症の影響などによる」という条件は、売上の減少が普通考えれば新型コロナウイルス感染症のせいであると説明できれば、他の原因もあったとしても認められる可能性がある。したがって、売上の減少の理由が、普通考えれば新型コロナウイルス感染症の影響にあると考えられる場合は、給付金の申請をしてみるのが望ましいと考えられる。
なお、仮に売上減少月(期間)の前年同月(期間)後に設立した法人で、前年同月(期間)の売上が存在しない場合、2019年の設立日から同年12月31日までの間の平均売上との比較で上記基準を満たせば③を満たすものと取り扱われる(創業特例)*6。もっとも、この場合通常より申請内容の確認に時間がかかる。
(5)④について
「家賃」支援給付金という名称だが、土地を賃借するテナントも対象となり、借地上に建物が存在していてもいなくてもよい。したがって、土地を賃借してその上に建物を所有して事業を行っているテナントや、駐車場または資材置場等として事業に活用している土地を賃借するテナントも対象となる。ただし、日本国内の土地・建物であることが前提である。
そして、自らの「事業」のために使用・収益する土地・建物の賃料であるとされているため、事業用の土地・建物が前提である。商業施設や宿泊施設のテナントに限らず、オフィスのテナントも含まれると思われるが、それ以外の、たとえば居住用の賃貸借契約を締結しているテナントは対象とはならない。ただし、事業用兼居住用の土地・建物である場合は、事業用の割合に換算した賃料を基準に算定した給付額を受け取ることができる。この場合、確定申告書作成の際に用いた損金計上額などにより、当該賃料額を計算することが想定されている。
また、「自らの」事業のためであることから、賃借している土地・建物を第三者に転貸している場合は④の条件を満たさない。ただし、土地・建物の一部のみ転貸している場合は、転貸せずに自ら使用・収益している割合に換算した賃料を基準に算定した給付額を受け取ることができる。
(6)⑤について
形式上締結している契約が「賃貸借契約」でなくとも、土地・建物の使用・収益の対価を金銭で支払う内容の契約であれば認められる。ただし、通常の賃貸借契約の場合より申請内容の確認に時間を要する場合がある。たとえば、出店契約、地上権設定契約、地役権設定契約、国や地方公共団体の公有財産の貸付契約または使用許可、(オペレーショナル)リース契約などが候補に挙がると思われる。業界団体ごとに、当該条件を満たす賃貸借契約と類似の非典型契約内容および要件をガイドラインとして規定することも想定されており、今後作成される当該ガイドラインにも注目である。
もっとも、契約の当事者であるオーナーとテナントに以下のいずれかの関係がある場合は給付の対象外である。
(i)実質的に同一当事者と言えるほどの密接な関係(自己取引)。たとえば、一方が他方の代表取締役である場合や、両者が会社法に規定する親会社等・子会社等の関係にある場合をいう。
(ii)配偶者または一親等以内の親族(親族間取引)
上記の(i)と(ii)をふまえて、オーナーとテナントの代表取締役同士が配偶者または一親等以内の親族関係にある場合なども給付対象外とされる。詳細は、給付規程に規定されており、また、今後さらなる詳細な説明の公表が期待される。
(7)⑥について
申請前の3カ月間の賃料に関し、オーナーから支払いの免除または猶予を受けている場合や、支払いを滞納している場合*7でも特例的に給付金を受け取れる。もっとも、この場合通常より申請内容の確認に時間がかかる。
なお、この場合でも上記⑦の条件は満たさないといけないので、申請日から1カ月以内に1月分は賃料を支払っていることが必要である。
(つづく)
*1 組合もしくはその連合会または一般社団法人については、その直接または間接の構成員たる事業者の3分の2以上が個人または当該(i)若しくは(ii)を満たす者であることが必要である。
*2 法人税法別表第2に当てはまる公益法人等(学校法人、社会福祉法人、医療法人等)および法人税法以外の法律により公益法人等とみなされる法人(NPO法人等)は出資額等の規模にかかわらず対象となり得る。
*3ほかに、国、法人税法別表第1に規定する公共法人(地方公共団体、国立大学法人等)、風俗営業等の規制および業務の適正化等に関する法律に規定する「性風俗関連特殊営業」、その営業に関して「接客業務受託営業」を行う事業者も給付対象外である。
*4新型コロナウイルス感染症対策として国・地方公共団体から事業継続を支援することを目的として支給される協力金など(持続化給付金を含む)の現金給付は売上に含めない。
*5ほかにもいくつかの類型で特例があるため、③に形式的に当てはまらない場合でも特例を使えないか申請要領をよく確認するのが望ましい。
*6この場合の申請書類として支払免除等証明書が要求されていることからすると、滞納については事後的にオーナーから証明を受けることで、実質的には、免除または猶予を受けたことと同等の扱いを受けられるものと考えられる。
2020/11/18 不動産経済FAX-LINE