マンション管理業協会(岡本潮理事長)は2月22日、「マンションイノベーションフォーラム2021」を開催した。マンション管理に関する優れた取組を表彰する「マンション・バリューアップ・アワード2021」のグランプリ審査や特別講演が行われ、グランプリにはつつじが丘ハイム管理組合による「コミュニティの再構築とマンション自主防災力の強化」が選ばれた。当日は東京・杉並区にある座・高円寺2を会場にしながら、一部の登壇者の参加や内容の配信をオンライン形式で行った。
グランプリは424件の応募の中から選ばれた、「マンションライフ・シニアライフ部門」「工事・メンテナンス部門」「管理組合運営部門」「防災部門」の各部門賞4件から決められた。当日は最終審査を行い、事前に審査していた各部門賞の受賞者がオンラインでプレゼンテーションした。
つつじが丘ハイム管理組合は東京・調布市にある1972年建設、443戸のマンションを管理している。経年とともに居住者の高齢化や、転居などによる顔見知りの減少が続いたことからコミュニティの再構築を2020年度から模索し、防災を軸にした居住者による支援体制の整備や防災マニュアルの作成などを行った。発表した久保田潤一郎理事長は、災害時要支援者の登録希望が115件あったことから居住者による防災支援ボランティアを構築したことを説明し「居住者がともに支えあうコミュニティづくりの第一歩になった」と話した。
各部門賞は、防災部門賞をつつじが丘ハイム管理組合が受賞。マンションライフ・シニアライフ部門賞には、プランターなどへの花植えを居住者全体で行うことで敷地内外の違法駐輪対策とマンション内の親子や高齢者、近隣住民との交流が同時に行えた「自治体と地域住民(団体)および管理組合との連携による『街なか花壇事業(花植え活動)』の実施について」(発表者=東急コミュニティー・米藤健太氏)、工事・メンテナンス部門賞には、築39年、90戸のマンションの排水管を樹脂管に一斉更新し、築80年目の更新を不要にするなどライフサイクルコストや居住者の負担を軽減させた「管種の異なる共用部分排水管全体の一斉樹脂化更新工事による長寿命化への試み」(野村不動産パートナーズ・桒原千朗氏)、管理組合運営部門には、管理組合と管理会社が協働して長期運営ビジョン作成や資産価値向上などに取り組んだ「建物の老朽化と居住者の高齢化に対処した管理組合の活性化対策構築及び活動」(シャルム浦安管理組合支援委員会・島﨑齊氏)が受賞した。
当日は表彰式も行い、石﨑順子副理事長が表彰状を読み上げた後オンラインで参加した受賞者に向け賞状を掲げた=写真。審査委員長を務めた横浜市立大学の齊藤広子教授は総評として「受賞したマンションにはみな、マンションの強みや弱みを知りながらもこのマンションだからこそというビジョンを共有していること、それを実現するプランを持っていること、情報を活用しながら専門家の支援を受けていることが挙げられる。そしてそのベースにはコミュニティがあったと思う。マンションをより良くしていきたいとチャレンジしている素晴らしい事例だった」と述べた。
このほか、元アップル米国本社副社長兼日本法人代表で㈱リアルディア社長の前刀禎明氏が「コロナ禍をチャンスにする『学び続ける知性』」をテーマに特別講演を行った。その後スペシャルセッションとして、岡本理事長や前刀氏、横浜市立大学の齊藤広子教授、マンションライフ継続支援協会(MALCA)の三橋博巳理事長、石﨑副理事長によるパネルディスカッションが行われた。岡本理事長は、マンション管理業の社会的使命はマンションの資産価値と居住価値の維持向上という価値を生む仕事とした上で「マンションの価値は管理組合のマネジメントが生む。マネジメントを進める上では、4月からスタートする国の管理計画認定制度と当協会の適正管理評価制度により、管理が生む価値のレベルが見える化されることは重要だ。これにより管理が市場で評価されることは画期的で、今年はその変わり目の年になる」と力を込めた。また石﨑副理事長は「管理組合のマネジメントをサポートする役割が管理会社にはあり、ハード、ソフトのバリューアップに関する専門性や知見を活かしていきたい。生活観も金銭感覚も様々な区分所有者で構成する管理組合の意思をいかに明確にしていくかが非常に重要で、組合の意思をつくっていくお手伝いを積極的にしていきたい」と、管理会社に今後求められる役割を展望した。
2022/3/5 月刊マンションタイムズ