コロナ禍の住宅、同圏内で選択肢広がる―部屋数重視で戸建好調、駅近以外検討も
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 新型コロナウイルス感染症の拡大後、テレワークが普及した影響で、住宅ニーズに変化が生まれている。「都心から郊外」というような大きな動きは限定的であり、あくまでも同一隣接エリア内で、部屋数や広さを重視するために駅距離の条件を緩めるなど、選択肢の幅が広がっている。
 リクルート住まいカンパニーが5月に首都圏の住宅購入検討者などに行った調査では、広さと駅距離の重視意向をみると、「広さ重視派」がコロナ前の調査時より10㌽増の52%となり、「駅距離重視派」が10㌽減の30%となった。近く公表予定の9月実施分の調査でも同じ傾向という。また、SUUMOでの物件閲覧数をみると、中古戸建ては千葉県の富津市や館山市、中古マンションでは神奈川県の三浦市や逗子市などの郊外部で、コロナ前から2倍近くに伸びている。ただし、閲覧数の集計なので購入確度については測れない。笠松美香・副編集長は「都心の中古マンションの人気は依然高止まり。郊外へのあこがれは強くなっているが、実際の動きは限定的ではないか」とみる。
 日々顧客と接する流通会社では同じエリアや沿線での選択肢の広がりを肌感覚で捉える。都心マンションの需要は変わらず強いが、テレワーク需要で部屋数や広さを求め、都心へ固執せずエリアを少し広げたり、駅近だけでなく少し距離のある物件も選択肢として視野に入れる人も増えている。東急リバブルは「部屋数や広さ重視の顧客は増えた。郊外部や駅遠、バス便なども選択肢に入れる顧客は以前より増え、選択肢が広がっている」とみる。長谷工リアルエステートは、数字上では各エリアで変化はあまりないとするも、川崎エリアについて、「以前は大田区の住民が多摩川を越えた川崎の物件を検討することはほとんんどなかったが、コロナ後はそういった顧客もみられる」としている。そのほか、「同じ駅や路線など、同じ生活圏内での需要の変化はある」(大手流通会社)など、各社とも肌感覚での変化は感じているが、「都心から郊外のような大きな変化は極一部ではないか」とみる。

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 広さを求める先には、戸建ての選択肢も入る。不動産情報サイト事業者連絡協議会が3~7月に行った利用者の意識調査によると、売買の検討物件では、中古戸建てが昨年より5・9㌽増の49・3%となり、中古マンション(4・8㌽減の44・0%)を逆転。新築でも同様の傾向で、中古と新築ともに、戸建てがマンションを上回った。この傾向は成約件数にも表れる。東日本不動産流通機構がまとめた4~6月の首都圏の成約件数をみると、中古マンションは前年同期比33・6%減だったのに対し、中古戸建ては22・1%減。月次でみると7月時点で戸建てはすでに前年同月を上回り、7~9月では中古マンションは同1・4%増だったのに対し、中古戸建ては同8・5%増と好調だった。東急リバブルでも、月次の仲介成約数をみると戸建ての方が好調に推移しており、1~8月の累計でみると、マンションが前年同期比10%減だったのに対し、戸建ては前年並みとなった。
 センチュリー21・ジャパンの長田邦裕社長は第2四半期の決算説明会で、逗子のある加盟店で反響数が1・5倍になったことを紹介。湘南エリアでの需要増は「テレワーク普及による都心からの移住ニーズ」とした。加盟店では中古物件の仲介のほか、新築戸建ての販売仲介を行うところも多く、主に戸建て需要の影響とみられる。テレワーク普及で変化が生まれた住宅ニーズだが、今後も続くかは不透明。足元では在宅勤務を終了し本社勤務に戻す企業の動きもあり、テレワークの定着度合による。
2020/11/16 日刊不動産経済通信

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