中古マンション市場が好調に推移している。3月も成約件数が4228件で単月では過去最高を更新した。近年、中古マンションの取引件数が新築マンションの販売戸数を上回っており、成約価格は10カ月連続して前年水準を上回っている。購入者が中古マンションに向かう理由は何なのか、新築とのバランスはどうなっているのか。足元の市況と今後の可能性を見る。
23区比率は中古成約が新築供給を上回る
新規登録件数減で価格上昇も成約率アップ
東日本不動産流通機構のデータによると、首都圏の中古マンション市場は、2001年の2万5860戸から順調に増え続け、リーマン・ショック後の2009年からは3万戸台(3万1183戸)、2016年以降は3万7000~8000戸台に増加した。2020年もコロナ禍にもかかわらず、3万5000戸台と落ち込みは少ない。一方、新築市場は、不動産経済研究所のデータによると2001年~2005年は8万戸台、「新価格」と言われた2006年から供給が減少し始め、2008~2015年はほぼ4万戸台で推移していた。2016年以降は価格上昇による売れ行きスピードの低下で3万戸台に減少。さらに2020年はコロナで2万7000戸台まで落ち込んだ。価格上昇によって新築が落ち込んだ2016年以降は、中古の成約戸数が逆転しているが、新築が徐々に販売戸数を減らすなか、中古は成約件数を順調に伸ばし、現在は中古と新築の戸数格差がさらに拡大している。
2001年から2021年3月までの、中古と新築の単価差は、平均40.9%だが、新築の価格上昇期(2005~2008年)では30%台と単価差が縮小している。新築の供給エリアが郊外化するのに対して、中古がそのエリアをカバーするように都心化していくためだ。2016年以降も同様に価格上昇期だが、現在新築供給が郊外化傾向なのに対して、中古マンションの取引が、都心・好立地傾向になっている。
新築マンションのエリア別供給比率の変化を見ると、価格低下が進んだ2003~2004年は、23区の供給が45%前後、郊外部が55%前後という供給比率だったが、2005年以降、23区の供給比率が30~35%と10%低下、価格上昇で供給エリアが郊外化している。一方、中古マンションの成約件数比率を見ると、2000年代前半は23区比率が30%だったが、その後一貫して比率が増加しており、近年の中古取引エリアは、ほぼ新築の供給エリアと同割合で、2020年以降は中古の方が23区の割合が大きくなっている。
さらに、中古マンション市場を細かく分析するにあたり、調査会社のトータルブレインがまとめたレポートが詳しい。駅距離別の平均成約単価乖離幅を見ると、5分圏と10分圏では5~10%程度の単価差で、城北エリアが12%なのに対して都心エリアではほとんど差が見られない。10分圏と15分圏では、平均17%の差だが、城東が19%、城北エリアが20%。対象を15分圏と15分超まで広げると、平均乖離率は24%となり、基本的に都心から距離が離れていくほど、駅距離評価のウエイトが高まっていく。築年数別の単価乖離率を見ると、多少エリアによって波があるものの、基本的に新築、10年以内、20年以内、30年以内、40年以内で各17%前後の規則的な成約単価の低下傾向が見られる。新築と築11~20年の成約単価乖離幅では、都心が34%、城南が27%、城西が32%、城東が25%、城北が33%と、ほぼ30%前後で横並び。築40年までは低下ペースは一定しているが、築40年を超えると、それ以上は成約価格の低下はあまり見られない。
中古マンションの新規登録件数の推移を見ると、コロナ感染が急拡大した2020年3月から大幅減少、2021年3月も1万3648件と19カ月連続して前年割れが続いている。昨年の11月以降は月1万3000戸台の新規登録件数で、それ以前と比べると、約4000戸・2割以上売り物件が減少している。一方、中古の成約件数は、昨年1回目の緊急事態宣言が発出された4~5月は取引数が激減したものの、6月以降は3000戸台に回復、8月以降は前年を上回る成約件数ペースとなっている。その結果、中古の在庫数は昨年6月以降低下を続けており、今年3月は3万4701戸と、昨年3月までの4万7000戸台から1万3000戸(約25%)も在庫が減少している。「中古マンションは品薄状態で、需給バランスが非常に良好な状態」(杉原禎之・トータルブレイン副社長)で、中古マンションは価格が上昇しているにもかかわらず、成約率が高まっている。
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2021/06/25 不動産経済ファンドレビュー