改正マンション管理適正化法・マンション建替円滑化法が完全施行 管理不全への危機意識持ち、適正管理への意識高める契機
マンションタイムズ

改正マンション管理適正化法・マンション建替円滑化法が4月1日から完全施行となった。不具合が生じやすくなるとみられる築40年以上のマンションが80万戸を超え20年後には367万戸まで急増すると見込まれる中、今のうちから管理不全予防に取り組み、また早くから再生を見据えることは自らが住むマンションだけでなく都市を守る上で不可欠。改正法施行はマンションの適正管理への意識を高める契機となる。

《地方自治体がマンション管理にチェック》

 地方自治体が地元にあるマンションの管理状況をチェックし、その状況に応じた対応ができるよう規定された。その対応方針を規定するのが「マンション管理適正化推進計画」(以下、推進計画)だ。推進計画は市や東京23区が作成主体で、町村については都道府県が作成する。おおむね5~10年を期間に、管理組合が取り組むべき事項や、自治体の取組目標、目標を達成するための施策などを規定。管理が一定の水準を満たすマンションを認定する「管理計画認定制度」(以下、認定制度)を実施する上での認定基準や、管理が不適切なマンションへ助言・指導・勧告等を実施する際の判断の目安も、自治体独自の基準を加えて推進計画で示すことができる。

 助言・指導等の目安は、管理者等や管理規約の有無のほか、管理費と修繕積立金の区分経理、適切な維持修繕を行うための修繕積立金の確保、長期修繕計画の作成・見直し、大規模修繕工事の実施が挙げられている。これらを満たさないマンションを助言・指導により改善し、適正管理が行えるようにしていく。改善がみられないマンション名の公表に踏み切る自治体もある。

《管理計画認定制度、管理水準向上や市場価格反映目指す》

 認定制度は、管理組合が定めた管理に関する計画(管理計画)が一定の水準を満たしたマンションを自治体が認定する制度。推進計画を定めた自治体が認定する。認定されたマンションは希望によりマンション管理センターが設ける「管理計画認定マンション閲覧サイト」で公表されるため、マンションの購入予定者がマンションの安全性や管理体制をチェックできるようになり、マンションの価値向上や、ひいては管理状況が市場価格に反映することが期待される。認定が価値向上につながってくると、管理組合の管理への意欲を高め、適正な管理への好循環が生まれる。認定は5年ごと。認定を受けると住宅金融支援機構の融資「フラット35」「共用部分リフォーム融資」の金利引下げが適用される。

 認定基準には、総会の年1回以上の開催や管理規約の作成、管理費・修繕積立金の区分経理、長期修繕計画の作成・見直し、修繕積立金の適切な設定、組合員名簿・居住者名簿の作成などが盛り込まれている。認定基準を満たす上では、長期修繕計画は国が定める「長期修繕計画標準様式」に準拠している必要があるほか、修繕積立金額が「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」が示した水準を上回ることが求められる。ガイドラインは法改正に合わせ改訂され認定制度と連動。適正な管理水準を満たす上ではガイドラインの理解も必要になる。

 認定申請に当たっては、オンラインで簡易に手続きできる「管理計画認定手続支援サービス」を設けた。マンション管理センターが作成した電子システムから必要事項を入力すれば、審査を経て自治体への申請書類が自動作成される。また、マンション管理業協会が運営する「マンション管理適正評価制度」、日本マンション管理士会連合会が運営する「マンション管理適正化診断サービス」と連携させ、制度を掛け合わせて活用することで多様なメリットの享受や、市場でのより高い評価などにつながるようにする。

 新築マンション向けの「予備認定制度」もスタートする。原始規約や長期修繕計画案などが基準を満たせば認定し、認定を受けたマンションの購入する場合はフラット35の金利引下げが適用される。認定制度の認定を受けるには別途申請が必要になるが、分譲当初の段階から適正管理への意識も根付かせることで、良好な管理が継続的に実施されることを狙う。2024年度までは認定制度を実施していない自治体にも適用する。

《敷地売却事業の対象拡大、敷地分割制度の創設》

 改正マンション建替円滑化法では、除却の必要性のあるマンションの認定(要除却認定)に当たり、その適用対象を拡大した。これまで耐震性が不足するマンションに限られていた敷地売却は、火災への安全性不足と、外壁の剥落などによる周辺への危険性の有無も要件に追加。この要件を満たしたマンションがある団地では、敷地共有者の5分の4以上の合意により対象のマンション敷地を分割して売却や建替えが行える敷地分割制度が活用できる。また、敷地売却の対象となるマンションに加え、配管の腐食などにより衛生上問題のあるマンションやバリアフリー性能が確保されていないマンションは、建替え時に容積率を緩和される特例を設けた。建替え・再生の検討が必要な場合に選択肢を増やし、円滑な対応ができるようにした。

2022/4/5 月刊マンションタイムズ

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