<マンション大規模修繕の戦略⑨>川本工業
受水槽を撤去し駐車場スペースを拡大できる給水設備更新(増圧直結給水方式)


中古マンションが流通市場で高い評価を得ていくためには、適切な改修工事が施される必要がある。施工会社はどのような戦略をもって大規模修繕を通じた付加価値を提供しているのか。このコーナーでは、マンション改修施工会社の大規模修繕についての考え方や戦略にスポットを当てる。今回は川本工業の取り組みを探った。


給排水設備更新をリードする 
新築の給排水設備工事に実績


 川本工業は、年間完成工事高約250億円、うちマンション改修工事高約23億円の設備改修(給排水や空調)を強みとする施工会社だ。創業は昭和5年(1930年)。創業当初は横浜市の水道管工事などの管工事を主としてきた。戦後は団地や集合住宅の新築設備工事に参画しつつ業容を拡大してきた。高度成長期前後からは大規模なオフィスや公共施設の給排水設備に加え空調設備も手掛けるようになった。平成期には横浜ランドマークタワーの空調設備や、横浜港国際客船ターミナルの給排水設備など、地元横浜市内のランドマークとなる大規模建築の新築設備工事の多くを施工している。

地元での知名度とリピート率の高さ

 同社はマンション改修の対象も設備関連を主とする。年間の施工戸数は約5000戸。数百戸規模のマンションを6~7件を主に元請で受注する。給排水設備の改修工事を主力とする企業はそれほほ多くないため、管理会社からの指名だけでなく、神奈川県や横浜市から給排水設備の改修工事を手掛ける会社として管理組合に紹介されるケースもあるという。また、神奈川県、横浜市内での施工実績が多く、横浜スタジアムへの広告宣伝などもあって同社の知名度は高い。
一般的に、給排水設備のうち給水設備は約15年、排水管は約30年以上で交換が必要になってくるとされる。そのため、給水設備更新を手掛けたマンションの管理組合から、排水設備の受注を受けることも多いという。

専有部における給水・給湯管更新工事を行う前の洗面所
床解体
配管更新
床の復旧仕上げと器具の取り付け
排水設備改修とリフォーム提案

 専有部に立ち入ることのある給排水設備改修の工事期間は約4カ月~半年と、外壁塗装やシーリングなどの大規模修繕の工事期間よりも若干長くなる。また、給排水設備の場合、専有部に立ち入っての調査が必須のため、調査・準備期間に半年ほど必要となる場合もある。給排水設備は、専有部の中でもトイレや浴室に近い場所に設置されていることが多い。居住者に忌避感が生じないとも限らない。そのため同社では、調査に立ち入るスタッフには高いコミュニケーション能力を求めている。
 給排水設備の更新工事は調査期間を含め1年近くになることや、給排水設備の工事に伴い給排水管の縦管を収納しているパイプスペースの壁を壊すことや、管理組合によっては専有部の床上床下部分の給排水管の改修に伴って床板を剥がこともあるため、同社では居住者のリフォームの受注に備えている。マンションや団地に、デモカーと説明員を派遣し、リフォーム後を模したキッチンや洗面化粧台、浴室、トイレを展示して居住者向けに説明を行っている。最も要望が多いのは、トイレ設備交換で、1現場あたり数件の受注があるという。なおリフォームの受注にあたっては、デモカーのスタッフよりも、実際に専有部に立ち入って調査を行うスタッフが丁寧に居住者にヒアリングを行い、リフォームの相談にも対応していくことがより重要だ。
 同社は、新築の給排水設備工事を社業としてきたため、改修においてもそのノウハウをいかんなく発揮できることが強みだ。今後は、マンションだけでなくオフィスや公共施設などの非住宅分野での給排水設備改修にも力を入れていくという。

 月刊マンションタイムズ 2021年1月号

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