発展可能性に高まる評価と底力―大阪のオフィスと投資市場を見る(上)より続く
外資系投資家が大型案件への投資緩めず
公示地価で20%下がっても200億円超の取引
大きく需給環境を崩さない大阪のオフィス市況下で、投資市場も底堅さを見せている。JLLによると、大阪圏の直接投資総額は、2010年以降右肩上がりで、コロナ前の2019年に約8500億円のピークを迎えた。2020年は落ちたものの8000億円程度にとどまり、2021年も8000億円に届きそうな勢いだ。コロナ禍にあって、投資額が大きく減っているわけではない。その投資市場を支える多くが外資系投資家であり、2020年から2021年における大型取引の78%を占め、100億円超の大型取引がさらに目立ってきている。2019年まで増えてきた投資額は、2020年は1500億円程度に落ちたが、2021年はコロナ前を上回る2046億円まで増加している。9月末から10月にかけて、「出光ナガホリビル」など100億円以上のオフィスビルが3棟取引された。
外資系投資家がどういう物件を買っているのか。2020年から2021年にかけて投資したアセットタイプは、オフィス47%(リテール寄りのオフィスも含む)、リテール12%、物流施設が41%(データセンター含む)。
2020年から2021年の具体的な取引案件は、「松下IMPビル」が300億円超、これは外資系ファンド間の売買だった。4月に売却された「WeWork御堂筋フロンティア」はWeWorkが1棟借りする新御堂筋沿いのビルだが、ラサールからMUGリアルエステート組成のSPCが取得する300億円超の取引だった。2019年から売買交渉を進めており、クローズがコロナ禍の4月だった。
好調なEC需要も後押しし、「レッドウッド南港ディストリビューションセンター1」は、今年3月に取引された。ESRが買い戻した形で、自らのプライベートリートに組み入れた。
リテールが壊滅的と言われる中で、かつてH&M、今はサンドラッグが入居する「デカ戎橋ビル」が取引された。2010年に丸紅が出資したTMKが「Luz Shinsanbashi」として開発し、2013年にシンガポールのクリサス・リテール・トラストが取得。2019年4月に住友商事が取得後、今年4月に独・デカ銀行の傘下が取得した。物件名称も取引ごとに変更されてきたが、戎橋でひと際目立つ物件であり、外国の投資家にとって1番有名な投資用不動産とも言われる。
「コロナだから、リテールだからが全く通用しない状況で大型の不動産取引がされている」(秋山〇子JLL関西支社キャピタルマーケット事業部ディレクター)。同物件は公示地価で「大阪中央5-2」のポイントだが、2021年は26.48%下がった。それでも取引されると、2019年4月に住友商事が購入した価格である208億円を上回る金額をつけた。
大阪はIR誘致など政治的に府と市の連携が取れており、方向性にぶれがない。外資はその点を大きく評価しているという。ファンドレイズする中で、市場が安定し梅田を中心とした発展性に期待を寄せた資金が大阪に向かっている。アフターコロナを見据え、リテールやホテルにも触手を伸ばしており、来年以降もポジティブに評価する外資系の資金が注がれそうだ。
2021/12/15 不動産経済ファンドレビュー