(提供 日刊不動産経済通信)デベロッパー各社による賃貸マンション開発が活況を呈している。主戦場は東京23区、特に都心オフィスにアクセスしやすい路線の駅近立地だ。この2~3年の賃料上昇に加え、国内外の不動産ファンドやJリートを含む機関投資家の取得意欲が極めて旺盛で、高い利益率で売却もできる。分譲マンションの開発ノウハウを生かせるのも利点。分譲と比べると用地が取得しやすいとされるものの、最近では供給プレイヤーが増えて取得競争が激しくなっており、かなりの高値で落札される用地もある。
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都市未来総合研究所によると、東京都内の賃貸マンション着工戸数は、2015年以降、右肩上がりに増えている。Jリートの物件取得額は21年で834億円と、コロナ前だった19年の水準を上回り、利回り4%以下での取得も散見される。日本不動産研究所の不動産投資家調査(21年10月現在)では、賃貸住宅1棟の期待利回りは、東京・城南地区のワンルームタイプで4・0%。半年前の前回調査から0・2㌽低下した。投資家の取得意欲は強く、「驚異的な高い利益率で売却できたケースもある」(大手デベロッパー幹部)。
賃料も直近ではコロナ禍の影響で横ばい、またはやや下落もみられるものの、高い水準を維持している。アットホームと三井住友トラスト基礎研究所のマンション賃料インデックスによると、17年頃まで東京23区の物件は横ばいだったが、18年以降は上昇傾向が鮮明になった。賃料インデックス(09年第1四半期が100)では17年は105未満だったが、22日に発表された21年第4四半期は113・18(前期比0・40減)だった。
こうした事業環境を踏まえ、デベロッパー各社は開発を加速させている。分譲マンションの開発用地が手に入りにくいため、不整形な土地や、やや住環境的に劣る場所でも成立する賃貸マンションが相対的に増えているという事情もある。分譲マンションの仕様・設備や開発ノウハウを賃貸マンション開発に持ち込み、周辺相場よりも高めの賃料でリーシングが完了した事例も多い。
コロナ禍で開発のトレンドにも変化がみられる。在宅勤務がしやすいよう、マンション内のサードプレイスとして1階などにビジネスラウンジを設けたり、パソコン作業もできる屋外テラスを設けたりする新築物件が目立つ。サンケイビルが1月末に竣工させた東京・台東区の「ルフォンプログレ蔵前プレミア」(98戸)では、2階共用部に広さ40㎡の入居者専用ビジネスラウンジを設置。半個室ブースや電話専用ブースも入れた。出入りの際の非接触化も実施した。
同社の佐々木ゆかり・常務執行役員は「1月末からリーシングを始めて、98戸のうち、既に半分の住戸の入居が決まった。かなり早い」と話す。在宅勤務の普及で「もう1部屋ほしい」というニーズも顕在化しており、「40㎡台前半の2LDKという新たな商品企画が非常に当たっている。25㎡の1Kよりも高い単価で貸すことができる」(佐々木氏)など間取りの評価にも変化が生じている。
ただ、供給プレイヤーと供給物件が集中するエリアでは一時的な過剰感も出ているケースもある。賃貸マンション用地の入札でも高値での落札が増えている模様だ。一方で、原材料費の高騰による建築費の上昇が今後見込まれる。高単価で賃貸するためには、訴求力のある共用部や間取りづくりが鍵を握りそうだ。