【賃貸住宅】空室増の23区・1Rも徐々に回復傾向 ファミリー好調、23区外縁部で在庫減少

 (提供 日刊不動産経済通信)新型コロナウイルス感染症の拡大以降、首都圏の賃貸住宅市場は東京23区の単身者向けが影響を受けた。不動産情報サイトのアットホーム上に登録された賃貸マンションの22年1月の募集賃料は、東京23区の50~70㎡と70㎡超、東京都下と神奈川県、埼玉県、千葉県の全面積帯でコロナ前(20年1月)より上昇しているのに対し、23区の30㎡以下は9万217円から8万7362円へ下落し、30~50㎡も僅かに下落している。

 23区の単身者向け物件では20年夏頃から、業績が悪化した飲食業やサービス業などの従事者と、学校がリモート授業となった学生、帰国する外国人などに解約の動きが出たほか、一般企業の転勤中止の影響も受けた。物件オーナーや管理会社はフリーレントの活用や賃料の値下げなどで空室対策をした。とくに空港関連と周辺施設、出張の多い企業で働く人の受け皿となっていた大田区エリアは影響が大きかった。新築物件の供給もあり、このエリアは厳しい状況がもう少し続きそうだ。

 その他の23区は足元で回復の動きが鮮明になっている。賃貸仲介のタウンハウジング取締役部長広報室長の江上琢氏は、学生の動きについて「21年春は学校の授業がどうなるかがまだ不透明で学生が動けず厳しい状況だったが、足元(22年1~3月)はだいぶ戻っている」と話す。法人需要も同様に回復傾向にある。ポートフォリオの約7割を賃貸住宅で運用している大和証券リビング投資法人の資産運用会社である大和リアル・エステート・アセット・マネジメントDLI投資運用部長の市川将一氏は、法人需要について「大手企業からの大きなロットでの依頼が増えニーズはだいぶ戻ってきている。ただし、予算は少し絞る傾向」と話す。大和証券リビングでは、東京23区のシングル向け物件の稼働率は一時的に90%台前半に下がったが、足元では98%近くまで回復している。

 一方でファミリー向け物件はコロナ禍の影響はなく、エリアを問わず好調な市況が続く。「一般企業が家族を伴う転勤を控え退去が少なかったことに加え、都心分譲マンションの価格高騰により代替としての賃貸需要がある」(大和リアル・市川氏)。物件数がそれほど多くないこともあり、空室が出るとすぐに次の入居者が決まる状況だ。とくに23区外縁の人気が高く、在庫が足りず賃料が上昇している。賃貸仲介のハウスコムは、需要の強いエリアとして千葉県の市川や船橋、松戸、柏など総武線や常磐線沿線と、埼玉県の京浜東北線沿線を挙げる。テレワークの普及により仕事と生活の空間を分けるため、都心部から少し離れたエリアで1部屋増やす動きが出たことも影響する。単身者向けでも1Kよりも1DKが人気だ。ライフルホームズ総研副所長の中山登志朗氏は、不動産会社への問い合わせ数やヒアリングから「同じ賃料で1部屋増やすため、準近郊や郊外への動きがみられる」と話す。

 今後について、アットホームラボデータマーケティング部部長の磐前淳子氏は「23区のシングル物件が低調な傾向はもう少し続きそうだが、空室物件数の増加は緩やかになってきている」と回復の兆しを感じている。ハウスコム社長の田村穂氏はニーズの変化を指摘。「狭小ワンルームは今後厳しい。同じワンルームでも防音がしっかりした広い部屋など、多少家賃を上げても性能の良い物件に人気が集まる」とみる。タウンハウジングの江上氏は、子育てやコミュニティを意識したファミリー物件やペット特化物件を挙げ「コンセプトとターゲットが明確な物件ほど人気があり入居がすぐに決まる。シングル物件なら今後テレワーク仕様も需要がある」と展望する。

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