高値が続く首都圏の分譲マンション市場において、高単価に対応するためのグロス圧縮傾向も急速に進んでいる。それと同時にコンパクトマンションのシェアも拡大している。中心部でのシングル向けの供給が難しくなる一方、エリアは城東・城北に拡大、城南・城西でもコンパクトの割合が高まっている。郊外部まで市場が広がりつつあるコンパクトマンション市場の方向性を見る。
専有面積圧縮傾向強まり郊外平均も60㎡台
2020年以降はメジャー駅から奥のエリアに拡大
首都圏の分譲マンション市場は、価格の上昇が著しく、つれて、事業エリアも郊外を伺う動きが出ている。その郊外でも限られた事業用地の取得競争が始まり、分譲価格に反映せざるを得ない状況にある。郊外では、購入者が1次取得層に絞られ、なおかつ建売戸建てと常に競合関係にさらされ、「買える価格」を設定しないと売れ行きに影響することから、グロス重視が求められる。勢い、専有面積を圧縮する選択を迫られている。不動産経済研究所のデータによると、首都圏マンションの専有面積は2002年の78.04㎡をピークになだらかに減少し続け、2016年から60㎡台に突入。今年1~9月平均は66.25㎡に15%縮小している。単価上昇に伴うグロス圧縮傾向は今後ますます強まっていき、郊外でも2019年以降に60㎡台に入ったことから、60㎡台の3LDK、50㎡台の2LDKの供給割合は今後ますます増加すると予想される。今後は郊外でのコンパクトマーケットの開拓も必要となる。
調査会社のトータルブレインは、首都圏郊外のコンパクトマンション市場を見通している。2000~2004年に平均面積30~40㎡台の平均供給戸数比率は、23区の割合が89.6%だったが、2020~2021年は66.9%に低下。その分、都下、横浜、川崎、埼玉、千葉の割合が上昇している。平均面積は全体に圧縮傾向だが、以前は面積が広かった郊外部(特に埼玉、千葉)で大幅な面積縮小が見られている。つまり、郊外部でグロス圧縮傾向が強まっている。平均価格はすべてのエリアで3000万円以上であり、23区や横浜、川崎では4000万円台まで上昇している。平均単価の上昇率は23区に比べて、神奈川、埼玉、千葉等の郊外が各段に高く、それでも市場に受け入れられている。供給するデベロッパーも、郊外部ではダイナシティや飯田産業、新日本建設などだったが、近年は23区では大手、準大手系の供給が続き、郊外でも日鉄興和不動産、一建設などメジャーデベロッパーの供給が増加している。
エリア別に市場を見ると、都下の年間供給戸数は、2020年以降急増し200戸を超え、平均価格、平均単価とも2015年以降3000万円台後半、300万円台/坪。都下のコンパクト市場が変化したのは、2016年の価格上昇期以降で、単価の急激な上昇にコンパクト化で対応する動きと見られる。面積帯別の供給戸数比率を見ると、以前は30㎡台後半~40㎡台が多く、広めの1LDK中心の供給だったが、近年は30㎡台前半の狭めの1LDKの割合が40%、30㎡台では7割となり、面積の圧縮が進んでいることがわかる。供給エリアにも変化があり、三鷹、国分寺など中央線沿線の東京寄りか府中、町田などメジャーな駅が中心だったが、2020年以降は、秋津、久米川、聖蹟桜ヶ丘、拝島など、いわゆる近郊からさらに奥に拡大している。供給される物件で共通しているのは、駅徒歩5~6分、総戸数30~60戸前後の小規模物件、2021年以降は30~40㎡台より50㎡台の割合が急増していること。供給される物件は、コンパクト特化型商品ではなく、ファミリー向けも混在した平均面積が50㎡台の「ハイブリッド型」が多い。
神奈川県も、もともとコンパクトの人気が高い神奈川区、西区、中区、川崎駅周辺を除くと、横浜は港区、保土ヶ谷区、川崎は宮前区、中原区、幸区での供給が多い。県央・湘南エリアでは30~40㎡台はほとんど供給されず、コンパクトからファミリーまでをラインナップしたハイブリッド型の供給が増加している。埼玉、千葉でもコンパクトの供給が急増しているが、主力は特化型ではなくハイブリッド型だ。(郊外エリアに新たな道筋 ―コンパクトマンション市場の足元と方向性(下)へ続く)
2021/11/25 不動産経済ファンドレビュー