<政府・技能実習生受入再開へ>アフター・コロナ時代の労働力市場をどうみるか①  GTN
GTN・後藤社長

コロナ禍で国内の外国人が減少した。外国人留学生や特定技能・技能実習生の動向はどうなっているのだろうか。一方で少子化による労働力不足はDXの加速で、将来的に労働力の必要性は薄れ、外国人の立ち位置にも変化がでてくるのではないだろうか。外国人家賃保証事業のグローバルトラストネットワークス(GTN)の後藤裕幸社長に、コロナ下の外国人の動向や今後の労働力市場についての見解を聞いた。

ーコロナ禍で海外との往来がない。


後藤氏 日本に住んでいる人はいったん外国へ出ても再入国で入れるが、基本は新規の入国はできない。コロナで外国人は減った。2021年6月末は282万人で、20年末は288万人だったので半年で6万人減っている。そもそも昨年の2、3月に外国人が国に帰って、4月になったら日本への入国不可となってしまった。訪日外国人は韓国・中国・ベトナムが多い。そこから旧正月となり、往来がない。例えば中国人だとこういう人が少なくない。中国に帰ったままでいるのに日本の家賃を払い続けている中国人が大量にいる。先月も中国から数千万円のまとまった入金があった。昨年も日本への留学を諦めて韓国とかに振り替えた人もいる。ある日本語学校は定員400人なのに今は4人しかいない。

ーそういう人もいて会社の事業への影響はどうだったか


後藤氏 影響はあったが、売上げは落ちなかった。家賃保証については、既存の代理店、不動産業者の一店舗あたりの申し込み件数が落ちてて、売上は落ちているが徹底的にシェアをあげることでリカバーした。そして代理店数を増やしたことで売り上げをケアできた。逆に大手企業の取り扱いが増えた。 それと当社は家賃保証以外のところで外国人向けの通信事業をやっていて、そこは伸びた。クレジットカードや人材派遣などの事業も行なっている。コロナのような事態があると、国内の流動性だけで伸ばすしかない。

ー滞納が増えることはなかったのか


後藤氏 国へ帰るときにわざわざオーナーとか管理会社に連絡は取らない。連絡は取れなくなる。日本の電話番号が有効な設定になってないケースが多い。となると滞納する。その時に他の不動産会社や保証会社や管理会社は審査を厳しくする。リスクだから外国人は止めよう、とか。そこで当社はコロナ前よりも、回収率が維持できている。むしろ上げている。うちはリスクマネジメントしっかりしているから回収能力が高い。今も現地のネットワーク、ベトナムではハノイ・ホーチミンに別会社があり、本人だけでなく親とも連絡取り合っていて。母国の親と綿密にコミュニケーションを取り、親と審査の段階からネットワークがある。他社だと両親の確認はあまりやらない。国境を越えてもコミュニケーションを途絶えさせない仕組みが大事。連絡が取れないと、滞納が故意なのかどうかがわからない。本人不在で家財を勝手に処分したり、契約を解約したりすると法的な問題になる。

ーコロナ後の往来緩和についてどのように見立てているか


後藤氏 今は国費留学生とアシスタント・ラーニング・ティーチャー(ALT) は来ることができている。おそらく次は就労者よりも学生が先に始まると見ている(取材は10月中旬に実施)。これからコロナの第6波があるかもしれないが、先進国で外国人の来訪を止めているのは日本だけだ。

ー飲食、小売・飲食はコロナ禍で機械化が進んでいる。ワンオペが増えた。自分で会計。そもそも人手いらなくなっていのでは?その中で外国人材の活用の整合性について


後藤氏 日本における外国人労働者を語る上で、一つは労働力の確保、もう一つは社会保障の維持だ。2040年で団塊ジュニアが65歳になると、労働者数と高齢者の数が同じ人数になる。今は2、3人で1人を支えるのが40年にはそうなる。労働者数を増やすには外国人しかいないだろう。DXだけで人の代わりをさせることはなかなかむずかしいのでは。人とロボットが共存する社会は考えられない。人間の数、働く人がある程度いて、国の社会保証を支える構造をつくることが大事。一人一人生産性高めて、定年を後ろ倒しにして、女性の社会進出を高めて、それらを駆使してかつ外国人を受け入れてなんとか 日本の社会保障が維持できる。DXしたところで、労働市場が奪われるわけではない。過去の例えばモータリゼーションの歴史を見ても新しい産業が生まれてそこに雇用が生まれた。DXで効率化してそこから生まれるのが人間らしい、クリエイティブなものが出てくる。

ー少子化が進んでおり、政府レベルでもいわゆる「移民政策」についての議論もある。


後藤氏 日本人の学生が減っており、今年は日本の全大学の定員に達しなかった。実質的な全入時代が到来した。ある民間企業の予測によれば、2040年には日本の大学は半分になるとのこと。このままいけば本当にそうなるかもしれない。自民党総裁選では、河野太郎が技能実習制度の見直しについて触れたり、野田聖子が移民政策を掲げたりと、政治家の考え方も変わってきた。私は移民政策までは取らなくてもよいと考えている。そもそも日本に永住しようとしているアジアの人はそこまで多くはない。日本に学生で来たとか、働くとかの理由で来ても、ゆくゆくは国に帰ろうという意思の人が大半だ。日本に魅力を感じて帰化する人がいるのはありがたいことではあるが、8割がたは国へ帰る。それでいい。

アフター・コロナ時代の労働力市場をどうみるか②へ続く

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