販売は全価格帯で順調に推移 今年前半の首都圏マンション市場を見る(上)より続く
中古マンションも品薄感が急激に高まる
コロナ追い風も用地不足の克服が今後の鍵
好調な分譲マンション市場に連れて、中古マンション市場にも大きな変化が見られている。新規登録件数は、2020年4月の緊急事態宣言時から激減。現在も前年割れが続き、2019年の平均1万7074戸に対して、今年6月までで1万3319戸と22%減少している。成約数は2019年の3176戸から3547戸に増え、在庫数は2019年平均4万7685戸から3万3641戸へ約3割減と急減している。中古の品薄感が急激に高まっていることから、成約単価は2019年の176.6万円193.6万円へ9%アップ。それでも新規登録件数に対する成約件数割合は2018~2019年の18%前後に対して、2021年1~6月は26%と成約率が上昇している。23区における2019年と比べたエリア別の中古マンションの成約率単価の上昇率を見ると、城東5区が23.9%、城南4区が21.1%と非常に高く、超都心3区が16.2%と続いている。一方で新築の値上がりがワンテンポ遅れている城北エリアは6.5%と上昇率が低く、中古もやや遅れて今後上昇すると見られている。
賃貸マンション市場は、2020年後半からはコロナ禍で法人需要が減退、賃料が大幅上昇していた都心や台東区では、既に5%前後の賃料調整が始まっている。都心・城東エリアでは、近年収益物件の開発ブームで賃貸マンションの供給が大幅に増加、高い賃料水準と需給バランスの悪化から賃貸の客付けに苦戦する物件も増加している。「2021年前半の首都圏マンション市場は、昨年後半からの市場回復基調が継続している。コロナで外出機会が減少、在宅時間が圧倒的に増加したため、賃貸脱出・持ち家志向が強まり販売が好調。マンション業界はコロナが追い風になっている。近年、利便性重視でマンションも都内都心化していたが、昨年後半からは割安な郊外マーケットの復調が顕著になっている。富裕層やアッパーサラリーマン、パワーカップル等は都内都心の1億円前後や億ションを購入しているが、一般層は中古や郊外の新築マンションを検討せざるを得ず、割安な郊外物件の販売が好転した。そのため、販売は全価格帯で順調に推移している。
しかし、販売が好調な一方、良質なマンション用地が少なく、用地仕入れに関しては各社とも苦戦。郊外に事業エリアを拡大させていかざるを得ない状況だが、売れ行きが好調なこともあって、今年前半は、供給エリアの郊外化が急速に進んでいる。そのため、供給が集中し需給バランスが崩れた郊外エリアでは、すでに売れ行きの低下と価格調整が見られている。先行き、デベ各社が郊外に向かうことで郊外の価格上昇懸念も高まりつつあり、マンション業界にとって用地不足をどう克服し、商品企画で乗り切るかが鍵を握っている。(不動産経済ファンドレビュー)