金融庁は11月22日に開催した金融審議会総会において、19日に閣議決定された「コロナ克服・新時代のための経済対策」について金融庁に関連する施策を説明した。また、「デジタル・分散型金融への対応のあり方に関する研究会」で検討された内容を中間論点整理として公表した。
経済対策では、財政支出約55.7兆円、事業規模は約78.9兆円で、GDPの下支え・押し上げ効果は5.6%が見込まれる。そのうち金融庁では、コロナ禍で打撃を受けた事業者への支援を軸に、成長戦略では国際金融センターとしての機能向上を含めた、市場・制度の整備を図っていく。デジタル・分散型金融への対応では、2019年に登場したグローバル・ステーブルコイン(GSC)構想に関する議論を中心にまとめられた。
11月19日に行われた閣議決定では、足元で新規感染者数が減少しているものの、依然として日本経済は厳しい状況であるとし、感染再拡大への危機管理を行うと同時に、「新しい資本主義」を起動することで実現する経済成長への道筋が示された。
金融庁関連の施策では、まず、コロナ対策の1つとして事業者支援を来年3月まで継続し、経営改善計画の策定支援、債務整理支援などを官民金融機関に要請する。次に、成長戦略を金融行政から支えるため、①クリーンエネルギー戦略に資するプラットフォームの整備、②スタートアップの資金調達を改善する、新規株式公開(IPO)プロセス及び特別買収目的会社(SPAC)制度の検討、③地方を活性化する「デジタル田園都市構想」実現へ向けた中小企業DXの推進、④地域金融機関等による人材マッチングなど“人”への投資強化が挙げられた。金融庁は、経済の底割れを防ぐ危機感を維持しつつ、成長に向けた機運を支援していく見通し。
同総会では、デジタル・分散型金融への対応について、7月から4回にわたり議論された内容が公表された。暗号資産の世界的普及は著しく、2021年8月の主な暗号資産の市場規模は約224兆円に達した。なかでも、Facebook社(当時)のリブラ構想に端を発したGSCは、クロスボーダーで決済に使用される可能性があり、大規模な場合は金融システムへ与える影響が大きい。2021年7月に開催されたG20財務大臣・中央銀行総裁会議では、関連する法律と規制に関する設計が十分に対処されるまでサービスは開始されるべきではないとの声明が出された。
GSCは、特定の資産、たとえば法定通貨と価値を連動させることで安定性を図り、権限や責任が異なる参加者が共通の台帳を保有する分散台帳技術を用いたもの。低コストでクロスボーダー送金が可能であり、誰でもサービスの提供や利用ができる利点がある一方、償還確実性やマネー・ロンダリング、テロ資金供与対策に課題がある。議論では、システム全体が技術・契約・制度・インセンティブ・信頼等によって規律付けられる必要があり、発行者には銀行業免許又は資金移動行登録が求められること、仲介者には取引対象となる行為を定め、過不足なく業規制の対象となるよう検討すべきとの考えが示された。金融庁は急速な普及へ注意を向けており、今後制度的な論点について9月に設置された「資金決済ワーキング・グループ」へ議論が引き継がれていく。2021/12/15 不動産経済ファンドレビュー
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