住宅情報提供サイトに光熱費の表示を (有)studio harappa 代表 村島正彦(中)より続く
業務負担は消費者メリットと捉えて
住宅情報提供サイトに掲載する「光熱費」の情報提供を行うのは、住宅事業者と連携する一般の不動産事業者である。数年経過して、その住宅が中古や賃貸に回れば、やはりその情報を正確にサイトに掲載する役割を担うのも不動産事業者である。
制度が運用されると、これまでの業務に加えて情報管理やサイトへの情報伝達等の手間が増える。「光熱費」という金銭の絡む情報であるため、不正確な情報掲載は不動産公正取引上の罰則を受ける可能性もあり、検討委員会に参加した不動産業界関係者からは導入に消極的な意見もあったようだ。
ただし、わが国の脱酸素社会の実現に向けては、あらゆる産業界が取り組むことが待ったなしの状況だ。脱炭素に向け大きく舵を切った米バイデン政権誕生もあり、今年4月23日の気候変動サミットで菅総理は「2030年には46%削減」を宣言した。2030年までは、わずか9年。住宅・建築分野においては、これまで考えられた以上のCO2削減が求められる。
こうした意欲的な政策の下、4月19日、国土交通省と経済産業省、環境省の3省は、住宅・建築物の省エネルギー化や脱炭素化に向けて規制や誘導策などを議論する「脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会」の初会合を開いた。カーボンニュートラルを実現するうえでは、住宅の断熱性能向上や創エネ(太陽光発電)が大きなカギとなる。また、既存住宅についての、省エネ性能の向上も喫緊の課題であり、これらをテーマに意欲的な目標が設定されることになろう。
建築業界や住宅産業と住宅消費者との橋渡しということでは、不動産業界の役割もまた大きい。「光熱費」表示は、住宅消費者の省エネに資する物件選択の分かりやすい指標になる。脱炭素社会への大きな転換への一歩と捉え、業界としても前向きに取り組んでもらいたい。
2021/5/12 不動産経済Focus & Research