エリア評価で大きな影響力を発揮 ―再開発事業が進む首都圏市場を見る(上)に続く
城東・城北も再開発が多く27プロジェクト・1万2657戸。城東では葛飾区の金町、京成立石、新小岩、江戸川区で平井、小岩など総武線、京成線等の下町・木密地域が中心。江東区は西大島のみで一段落し、墨田・台東区は一時期は多かったが見当たらない。城北では豊島区が池袋と東池袋駅周辺、板橋区は上板橋・板橋・大山等、荒川・足立区は西日暮里、三河島、北千住、綾瀬等の駅前再開発が計画されている。
都下は中央線沿線が一段落し、南町田、青梅駅前、小川駅前、小平駅前程度で少なめ。
神奈川県は24プロジェクト・5582戸が進行中。横浜駅、関内駅周辺での再開発計画が多く、横浜中心部での再開発が進んでいる多く。また、武蔵小杉もこれまでに再開発タワーが11棟・約6500戸が建設されているにもかかわらず、1500戸の計画を含めて再開発は継続している。近年は相模大野、海老名、相模原、本厚木など県央地区と大船、藤沢、辻堂など湘南地区での再開発事業が多かったが、今後は、相鉄・東急直通線(新横浜線)の開業に伴う羽沢横浜国大、新横浜、新綱島のほか、リニア新幹線の橋本等、新線・新駅開発に伴う再開発でのエリアポテンシャルアップが注目される。
埼玉県は大宮に再開発が集中。それ以外は浦和駅西口、川口、武蔵浦和で引き続き再開発が計画されている。県内13プロジェクト・3407戸。基本的には京浜東北線沿線。それ以外は春日部駅前、川越駅前、東川口駅前にある。
千葉県では9プロジェクト・4520戸。千葉駅周辺に多くあり、それ以外は船橋駅南口の西武百貨店跡地開発、南船橋駅南口、柏駅西口など。千葉は全体的に再開発が少なめだ。
相場上昇の共通点は内容と沿線・駅力の高さ
評価アップが期待できるエリアは約20カ所
過去にどんな再開発が行われ、内容評価はどうだったのか。再開発がエリアの市場相場を大きく押し上げたケースの共通点は、再開発の内容が充実していることに加え、単発の再開発ではなく連続していたこと。エリアのポテンシャルを大きく変えられる再開発事業だった。もう1つの共通点は、沿線・駅力が高く、東京からの距離が近いところが多い。元々居住者や利用者の多い駅での再開発だ。例えば、目黒駅前の周辺相場は2010年~12年の周辺相場と比べて67%上昇、千住一丁目が65%上昇など60%超が4プロジェクト、50%超が4プロジェクトあった。一方、再開発をしたにもかかわらず上がらなかったのは、内容が薄く、単発だったり、沿線力はあっても乗降客数が少なかったり、東京からの距離が遠く、居住者・利用者が比較的少ない駅での再開発が多かった。調布と大船では、再開発の評価は高くとも、エリアにおける供給が非常に多く、需給バランスの関係で価格上昇が抑えられた事例もある。
現在計画中・事業中の再開発で見ると、都心・城南・城西エリアでは、すでに再開発効果を先取りした相場となっており、今後の上昇に関しては冷静な判断が必要だが、それ以外でも、評価アップが期待できるエリアとして約20カ所あり、京成立石、新小岩、小岩、平井、綾瀬、十条、板橋、北千住等の城東・城北エリア、神奈川では、相鉄線の東京乗り入れに伴う新駅、綱島・新横浜エリアや、大型再開発が続く横浜駅・関内駅周辺等の中心部もエリア評価の大幅な向上が期待できる。埼玉では大宮・浦和等の人気駅、千葉では千葉・船橋・柏・津田沼等の人気駅が引き続き再開発で評価を上げていくと予想される。
基本的に再開発はJRの駅前が多い。「理由は2つある。1つはJRは街づくりが早かったので再開発のタイミングにきていること。もう1つの理由が、JRの方が圧倒的に利用者が多い。再開発効果が高い。JRの駅は再開発の条件を満たしている」(杉原禎之副社長)。
再開発事業は防災上の課題解決や、老朽化した都市基盤の再整備、中心部の街区の高度利用による都市機能・利便性の向上等につながるため、ニーズはますます高まっていく。今後は、再開発事業の重要度とともに再開発への関心が高まり、街づくりやエリア評価(人気)の面でも、さらに大きな影響力を発揮していくと見られている。
2021/5/15 不動産経済ファンドレビュー