トップインタビュー;マンション管理の未来㊽ 日本ハウズイング社長 小佐野 台氏(下)
日本ハウズイング・小佐野社長

トップインタビュー;マンション管理の未来㊽ 日本ハウズイング社長 小佐野 台氏(上)より続く

――適正管理評価制度が22年4月からスタートする予定だ。どう取り組むか。

 小佐野氏 建物の価値を評価してもらいたいことと、マンション管理を理解してもらうために情報を開示していこうという2つの趣旨でマンション管理業協会の評価制度の議論がスタートした。評価である以上、点数やランクが付くことから平均値以下のマンションは取り残されてしまうケースがあるのではないかと危惧している。未収金や修繕積立金の不足、長期修繕計画がないというマンションは、平均点以下になってしまうことになるので、例えば未収金であれば督促のアドバイスを弁護士などの専門家から得られるなどの何らかの支援をしていかなければいけないのではないかと業界としても考えている。長期修繕計画についても現況は管理会社によって対応は様々であり、国土交通省の長期修繕計画ガイドラインに則って作成しているところもあれば、簡易な計画で済ませているところもあるので、協会としても支援が必要になるのではないかと思う。

 適正管理評価を受ける主体はあくまでも管理組合だ。管理組合が登録し、管理会社は補助するという立場になる。来年4月から制度が開始される予定だが、議論がスタートしたことによって、管理会社や管理組合にとって気づきが得られたことは大きい。例えば、消防計画や防災計画の部分において当社として十分に提案できていない部分もあったが、国が認定制度の中でそのような整備を求めているということになれば消防計画の整備や防災訓練の実施など、組合の意識を高めるとともに取り組みを広げやすくなる。自分たちの仕事の見直しができる機会になった。

――DXへの取り組みについては。

 小佐野氏 2019年度から5カ年の中期経営計画「PLAN23」を策定し、今年度は3年目に差し掛かる。DXの取り組みとしては、当社が保有するデータとIT技術を活用して新しいものを考えていきたい。また、管理業務や修繕工事のさまざまなデータをAIなどを活用し、取り込むことによって、サービスの付加価値を高めたい。

 たとえば大規模修繕工事は年間約300件実施しており、一般営繕工事も数万件という見積りのデータを保有している。これまで蓄積したデータを集約し、パターン化した内容を取り込み、自動的に見積書を作成するシステム「NEPRO」の開発を現在進めている。パソコンやスマートフォンを活用することで迅速に見積書を提示できるようになり、効率的な業務の進め方にもつながるものだと確信している。また、立体的な積算ができるBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)の活用、会計業務におけるRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の活用による省力化など、これまで人がやってきた業務の一部を機械に置き換える取り組みを進めている。

#適正評価制度の定着で管理業務のやり方が変わる

――今後の業界の見通しは。

 小佐野氏 マンション管理適正評価制度がどのように定着していくのか、それによって管理会社の業務のやり方はもっと変わっていくのではないかと考えている。デジタルを活用した業務の効率化に取り組んでいるが、システム投資、 人材育成の費用や時間は相応にかかる。その分だけ管理組合に管理委託費を上げてもらえるわけではないので、企業としての資本力や規模感によって持ちこたえられる企業とそうでないところの差が出てくるだろうと認識している。

 居住者の高齢化、建物の経年劣化、管理員の高齢化という3つの老いにどのように取り組んでいくべきか。個社として取り組みをしなければいけない一方、業界として考えていかなければならない面があると思う。マンション管理業協会でも認知症や建物の長命化、高齢者雇用についてもどのように向き合っていくべきなのか、突き詰めていきたい。

――政策要望について。

小佐野氏 これからは管理費や修繕積立金を値上げできない経済状況になっていくと見ている。管理組合が建物や敷地を使って収益があげられる方法を考えていく必要がある。看板の広告料や携帯電話の基地局の設置、駐車場の外部貸しなど、管理組合が工夫して生み出した収益に対しては非課税にしてほしい。

また、既存建物を適切に管理して長く活用していくのが国としての方針であるならば、修繕積立金の考え方を分譲マンションのみならず、ビルや賃貸マンション、戸建てにも広げ、課税控除の対象にしてほしい。現況では修繕積立金は分譲マンションだけの考え方になっている。ビルや賃貸マンションのオーナーは金銭的に余裕があれば修繕工事をするけれど、経済事情によって実施できたり、できなかったりしており、計画的な修繕ができていない。ビルや賃貸マンションのオーナーには修繕積立金を建設信託にして資金を預け、修繕工事費を積み立てていく仕組みが必要なのではないか。管理会社や修繕施工会社がどういう提案を行ったら国に賛同してもらえるのか考えていきたい。

小佐野 台(おさの うてな)氏

1965年6月15日生まれ。東京都町田市出身。1990年4月日本ハウズイング株式会社に入社、2005年6月同社代表取締役社長就任(現任)。マンション管理業協会副理事長、全国住宅産業協会理事。

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