21日の参院本会議で、相続登記義務化に関連する、民法等の一部を改正する法律及び相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律(土地国庫帰属法)が全会一致で成立した。相続登記義務化により所有者不明土地問題はどう進展するか。今後の課題と司法書士会が果たす役割などについて、日本司法書士会連合会の今川嘉典会長に話をきいた。
―民法と不動産登記法改正案、並びに新法・土地国庫帰属法が今日、可決した
今川会長 これまで衆・参両院での参考人質疑を受けて、司法書士に対する期待をひしひしと感じた。法案の付帯決議を見ても、相続財産管理人制度については司法書士と土地家屋調査士に期待する旨の文言が入り、さらに今回の法案の成立前に既に成立している施策である、所有者不明土地特措法、表題部所有者不明土地に関する法律、遺言書保管等に関する法律などの制度においても、司法書士をしっかり活用するようにとの文言がある。司法書士に対する期待は大きい。
―これまでの経緯を振り返って、今回の法案をどのように評価しているか
今川会長 法制審議会が当初スタートした時はかなり沢山の課題があった。そのため、議論の過程でその多くが論点落ちし、重要なものだけが残るのではないかと思っていたが、あまり落ちず、そのほとんどが実現に至った。これは無理かな、と思っていたものまで入ったと思っている。学者や政府、皆が一丸となって、所有者不明土地問題をなんとかしないといけないということで、相続登記義務化をはじめとする歴史的な改正に繋がった。そこは評価できると思う。所有者不明土地問題の解消、そして将来に向けて、所有者不明土地を新たに発生させない、こうした取り組みに向けた第一歩だ。時代が変わり、根本的に土地所有に関する国民の意識が変わってきている。それが相続登記義務化によってさらに意識が変わることに繋がるのではないか。
―あえて課題といえば何になるか
今川会長 もっとも、完璧な制度は存在しない。国内には管理ができない土地、使用するつもりがない土地、さらに言えば「所有や相続したくない」土地があり、これらを解決するにはどうすればいいか。今回改正した民法と不動産登記法だけでは無理で、その点は課題かもしれない。土地国庫帰属法は出来たものの、なんでも帰属を認めると国の負担が重くなる。そのため、国庫帰属のためのハードルは若干高いのではないかとは思う。法施行後、5年で見直す規定はあるので、このハードルをどのように運用していくかが、もう一つの課題だ。さらに言えば今回改正・新設された法律ではカバーできない部分を埋める、土地政策も必要だろう。いわゆるランドバンク制度などは民事基本法ではできないので、併せて導入すべきかとは思う。あとはインセンティブだ。特に相続登記に係る登録免許税の軽減策などをどこまで国が盛り込んでくるかだろう。
―ランドバンクは国内でも一部の地域で行われている。国会質疑で今川会長も政策的なアプローチの一つの例としてランドバンクを挙げていた
今川会長 ランドバンクは組織体が完全に自治体など公的機関が行うもの、民間が行うもの、半官半民であるとか、組織体は様々あるし、中身についても所有者と利用者のマッチングであるとか、農地では解禁された土地使用権の設定であるとか、究極としてはランドバンクがすべて所有して自ら計画し、利用権の設定や売却などを行うという制度もある。ただどういう施策を取るにも十分な予算の確保が前提だ。財源があるかだ。ランドバンクの仕組みを民間が全て行うにも、市場原理で流通に乗らない不動産を扱うことは困難だ。そのため実効性ある施策とするには、かなり公的な予算をつぎ込まないといけない。そこはネックになると思う。