シリーズ;相続登記義務化をどうみるか③所有不動産記録証明、国の不動産検索システムに期待
相続・事業承継お助けセンター(左より吉田氏、鷹取氏、土田氏)

相続登記義務化に関連する民法・不動産登記法改正、及び「土地国庫帰属法」が国会で成立した。司法書士の全国組織である日本司法書士会連合会ではフリーダイヤルによる相続登記の相談を設けてあらゆる問い合わせに対応していくという。では実際に司法書士の現場は制度改正をどうみているのだろうか。相続における税務や登記などをワンストップで対応する、一般社団法人相続・事業承継お助けセンター(代表理事=鷹取正典税理士)に所属する司法書士の吉田研三(よしだ・けんぞう)氏、同じく司法書士の土田慧(つちだ・さとし)氏、代表の鷹取税理士に話を聞いた。

―相続登記義務化を受けて世の中の反応をどうみているか

吉田氏 法案は成立したものの、制度的にまだ見えない部分はある。ただし世間の関心は非常に高いと思っている。つい先日もあるラジオ番組に出演し、一連の相続登記の義務化とはどういうものなのか、解説をさせていただいた。視聴者からの反応も良かったようで、相続に絡んだ依頼は確実に増えるとみている。ビジネス面としても注目されているようだ。当方の事務所にも連日のように、「相続登記の義務化を受けて司法書士のビジネスチャンスは何か?」と言ったような司法書士向けのセミナーの勧誘が来ている。

―第一線の司法書士として今回の法改正で重視している部分は何か

吉田氏 相続登記に必要な、添付書類の簡略化だ。どれくらい簡単になるかはまだ詳細が不明な部分もあるが、専門家に依頼せずともシンプルに登記できるぐらいにまでなると、相続人が自ら行うようになるかもしれない。

土田氏 最近はネットが発達しているためか、自分で調べて登記までしてしまう人も増えている。書類の簡略化によって相続登記まで完了するならば、登記がよくわからないから専門家を使う、ということにはならなくなるかもしれない。それでも全体的な相続登記の依頼量は増えるとは思う。

吉田氏 相続登記で大変なのは戸籍関係の書類集めで、それ以外はそんなに難しくない。普通の自宅であれば、やろうと思えば時間さえあれば一般人でもできる。相続人が沢山いるとか、数代にもわたる「数次相続」になると大変で、そこは登記のプロである司法書士の出番となる。面倒な戸籍だが、あと数年もすれば、現在の戸籍であれば全国どこでも自分の自治体でとれるようになる。

―相続登記に係る費用と、義務化によって司法書士間・他の士業との競争はどうなるか

吉田氏 相続登記の費用は物によっても異なるが、だいたい7、8万円程度。ただし義務化によって件数が増えれば、大手の司法書士法人は値段を下げてくるから価格競争になるかもしれない。

土田氏 義務化させたはいいが、あとはお任せみたいな印象だ。値段の基準もないから、価格競争は起きるべくして起きるだろう。義務化した一方で、報酬があまりも高いと普及はしないし、手続きを簡略化して値段を下げる動きがあるかもしれない。登録免許税は下がるというのが業界一般の見方だ。

吉田氏 ポジティブな部分もある。これまで登記は義務ではなかったから、登記が後回しにされていた。税金関係は誰でもしっかり行うが、名義については二の次にされていた。これが義務化されるということで、フロントに司法書士が選ばれるようになるかもしれない。相続手続きは、税理士に最初に相談されるケースがいまは多く、司法書士は下請けのようなところがあるが、義務化をきっかけに、司法書士が相続ビジネスの最初に立つかもしれない。

鷹取氏 亡くなったから相続登記だけを先に行うという人は基本的にはいない。司法書士は不動産会社や銀行など金融機関からの紹介が多く、手続きだけ依頼されるという感じで。それが相続登記の義務化で最初に相談される機会が増えると見ている。すでにネットからの集客が一定数以上あるが、そこにもっと力を入れていく司法書士は増えるのではないか。相続をちゃんとしなきゃいけない、そうなると相続が発生する前にしっかり対策したいというニーズが生まれるはずだ。専門家としてはこうした事前の対策についてしっかりサポートできるよう、きちっとした対応が求められてくるのではないか。

―国が今後、個人が所有する不動産の一覧を検索できるシステム開発を行うようだ

吉田氏 今回の制度改正で創設される、「所有不動産記録証明制度」だ。登記名義人の住所と氏名を入力するだけで、「不動産の一覧」が全て把握できるものだ。不動産一覧というのは名寄帳で、所有不動産の関係が全て判るから、登記漏れが無くなる。これは凄い改革だ。現状だと登記名義人がどんな不動産を持っているか、相続人が自分で調べることになる。例えば自宅であれば明らかだが、例えば地方に別荘やリゾートマンションを持っていたとか、相続人も意外とわかっていないことが多い。その状態で登記すると登記漏れになる。相続人も後から登記が漏れていたと司法書士へクレームをつけてくる人もいる(笑)。

 登記漏れするケースで一番多いのが私道部分だ。何人かで共有していて、持分のほんのちょっとだけ持っている場合。そういうのは名寄帳にも載ってこないことが多い。自治体に問い合わせても、対応が自治体によって違ったりする。共有名義は具体的な物件を出さないと、情報自体もらえないこともある。それでは名寄せではない。これまでアナログ的にコツコツ集めていたのが、新たな制度で、その人の持っている不動産全て出してください、と言えるようになる。制度的には国が介入していろいろできるようにしていこうという感じがある。そう考えると仕事が減るかもしれない(笑)が、同時に仕事がやりやすくもなる。

―新たに構築される検索システムでは、現在の住所だけでなく、過去の住所でも検索ができるようだ

土田氏 とくに法務局の管轄の縛りもない。全国でその法務局に申請すれば管轄関係なく不動産一覧が取れるようになる。この制度を作るから、名義変更登記も義務化したのではないだろうか。物件の特定の仕方が、これまでは住所を変更したら、住所変更を申請しておかないと、過去の住所のままだと、検索にひっかからない。だから名義変更を義務化したのではないか。ところで過去の住所も、いちいち申請しなくても、住民基本台帳ネットワーク(住基ネット)に紐づけておけば、住所が変わればすぐにわかる。そのため法務局が把握できたら、職権で住所変更を行う仕組みが新設されるようだ。

吉田氏 住所変更登記の義務化は、結構重たい。そんなことをしなくても良くならないのだろうか。相続や売買は当時者の意思が関わってくるから登記しないといけないという意識が生まれるが、住所変更なんて登記が必要だと思う人が少ないだろう。当方の事務所では、住所変更登記の費用は不動産1つにつき1000円、司法書士報酬1万円で行っている。決して高いとは思わないが、やらなくてはいけないというのはどうなのか。引っ越して住民票を出したら、自然と登記に反映される仕組みができるとか。

鷹取氏 検索システムの利用については「何人でも」とあり、誰でも利用が可能だ。税理士としては、不動産関係の調査を司法書士にお願いするが、不動産一覧があれば二重チェックになる。相続税計算で全ての不動産を把握しないといけないから、ちゃんとできるのはいい。

シリーズ;相続登記義務化をどうみるか④ へ続く

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