トップインタビュー;マンション管理の未来 第46回 穴吹ハウジングサービス社長 新宮 章弘氏②
新宮社長

トップインタビューマンション管理の未来 第46回 穴吹ハウジングサービス社長 新宮 章弘氏①に続く

超高齢社会を迎えた中で増え続けるマンションストック。建物の老朽化と入居者の高齢化という「二つの老い」が進み、修繕・改修工事等も含むマンション管理の重要性がますます高まっている。このコーナーではトップインタビューを通じてマンション管理の未来を追う。今回は、M&Aを積極的に進める穴吹ハウジングサービスの新宮章弘社長に、重点的に取り組んでいる課題や今後の展望などを聞いた。(2021年1月22日にオンラインで取材)

――トレーラーハウスによる顔認証技術を使った無人店舗の設置などの新規事業の展開について。


 新宮氏 長崎市の管理受託マンションで2店舗目の無人店舗「FACE MART」を開設した。分譲マンションの敷地内に設置し、マンション居住者に限定したクローズド型のスーパーマーケットだ。坂道が多い地形的な特性と高齢の居住者が多いというマンションの特性から管理組合には喜んでもらっている。無人店舗の設置によって利益が出るということはない。ただマンションの社会課題を解決することで当社グループへ関心を寄せてもらうことを目的に設置しており、7年かけて投資した資金が徐々に回収できたらよいという思いで運営している。管理組合には「居住者の皆さんが利用してくれないと無人店舗はつぶれてしまうから、育てるような気持ちで利用してください」と話している。無人店舗を増やしていくには、無人店舗の商品を納入する事業者の確保が課題で、地元のスーパーマーケットや生協などの協力を取り付け、できれば全国で展開していきたい。
 利便性について思いを馳せてみると、銀行は昔、銀行店舗に行かないと出入金ができなかった。ATMができて銀行店舗に行かなくてもよくなり、ついにはコンビニにATMが設置されるようになった。どんどん利用者に近づいていき、コンビニのATMに勝るものは何かといえば、より自宅に近いものだろうと考える。便利だからこそ使ってもらえるし、その便利さがきっかけで当社グループの他のサービスに目を向けてもらえるのではないか。
 かねてより、シェア(共有)の発想で管理業界やマンションの住まい方を見直したいという考えを持っていた。シェアサイクルやシェアカー、無人店舗など、シェアの要素を詰め込んだマンションのモデルケースをグループ会社の穴吹興産と共に作りたい。必要以上に機械式駐車場を設置しなくてよいし、駐輪場を広く取らなくていい。空いたスペースは共用施設として有効活用できる。これまで当社はシェアサイクルやカーシェア事業で実績を重ねてきたので、そろそろ実際のマンションに取り入れてみたいという思いがある。

エネルギーマネジメントとヘルスケアはこれからのキーワード

――今後の業界の見通しは。

 新宮氏 管理業界同士のシェアは深まっていくと思う。管理会社の数が多すぎるのである程度集約していく必要がある。たとえば研修施設などを持っていない管理会社は付加経費がかからないので管理コストが安い。管理組合が管理会社を決める際に金額に対するウエイトは高いので、「安い会社がよい」となってしまう。その結果、マンションは適正な管理ができず、コストだけで判断するようになり管理組合は成長しない。管理会社にとっても適正価格で適正な管理ができない。設備に投資できない零細な会社は集約されていくのではないか。国の施策でも後継者不足の中小企業をまとめていくために合併にかかる費用の補助制度をやっているが、国土交通省が旗振り役となって管理会社版を創設し、管理業界が底上げされることを望んでいる。 今回のコロナの影響を受け印鑑をはじめとして規制緩和をしていく必要があると思っている。必要性があるのか疑わしいほど煩雑な手続きなどを緩和して仕事をしやすくする方向が望ましい。デジタル化などによる仕組みの改革はアフターコロナの管理業界にとっては変化のきっかけになるのではないか。

――今後の展開について。

 新宮氏 エネルギーマネジメントとヘルスケアはキーワードになると考えており、何らかの形で当社が関わっていきたい。ヘルスケア分野については研修施設「あなぶきPMアカデミーTOKYO」の未来専有部スクエアのコーナーで生体リズムに配慮したベッドルームや先端技術を活用したサニタリー設備を紹介しているが、部屋内で居住者の健康を支援するようなイメージだ。 また、当社は宮崎大学と共同で、焼酎製造過程で排出される焼酎粕からエタノール燃料と固形燃料を製造するというバイオマス事業に約8年前から取り組んでおり、今年4月にプラント工場を開業する予定だ。これまで焼酎の製造過程でできる焼酎粕は産業廃棄物として処理されており、焼酎メーカーに1トン当たり8000円ほどの費用がかかっていた。工場の稼働によって廃液処理コストを減らして、ボイラー燃料となるエタノールとバイオマス燃料(ペレット)に生まれ変わらせることができるもので、当社は将来的に発電設備等と組み合わせて酒造メーカーにこのシステムを売り込む計画だ。 

 海外事業ではベトナムでのマンション管理戸数が1万戸を超えた。ベトナムの民間放送局からリーディングカンパニーベスト100社の一つとして表彰され、現地に当社が定着しつつある。ベトナム以外のアセアン諸国での管理事業については、コロナ禍で現地に飛べない分、リモートで交渉を進めており、アフターコロナを見据えて事業化できる道筋をつけているところだ。 昨年はM&Aで6社をグループに招き、種を蒔いた1年だった。今年は辛牛(かのとうし)の年に当たるが、新しいスタートをするにはふさわしい年まわりだと聞く。来年には蒔いた種が満開の花を咲かせるよう事業を丁寧に育てていきたい。

##新宮 章弘(しんぐう・あきひろ)氏
1963年1月16日生まれ。1989年1月(株)穴吹ハウジングサービスに入社、2002年4月同社取締役就任、2005年専務取締役就任、2017年代表取締役社長(現職)。穴吹興産株式会社取締役、穴吹公寓大廈管理維護股份有限公司董事長、穴吹東海保全股份有限公司董事長。

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