トップインタビュー;マンション管理の未来 第46回 穴吹ハウジングサービス社長 新宮 章弘氏①
新宮社長




超高齢社会を迎えた中で増え続けるマンションストック。建物の老朽化と入居者の高齢化という「二つの老い」が進み、修繕・改修工事等も含むマンション管理の重要性がますます高まっている。このコーナーではトップインタビューを通じてマンション管理の未来を追う。今回は、M&Aを積極的に進める穴吹ハウジングサービスの新宮章弘社長に、重点的に取り組んでいる課題や今後の展望などを聞いた。(2021年1月22日にオンラインで取材)

東北・北陸のシェア拡大へ
グループの多機能化に向けM&A活用

コロナ収束後もテレワーク、省人化

――事業の課題と対応策について。 

 新宮氏 マンション管理業については、管理組合からの要望で点検や大規模修繕はコロナウイルス感染症の収束後にしてほしいという声があり、売上の期ずれが発生するものの深刻な影響はないとみている。1回目の緊急事態宣言期間中は管理員のごみ出し業務をどうするか悩ましかったが、2回目の緊急事態宣言では、管理員は感染防止対策を施した上で通常出勤とした。フロント業務については、現地に出向いての理事会開催や打ち合わせはオンラインで行う法が広がっており、業務上の支障は感じていない。一方でコインパーキング事業は、利用者がテレワークになり、車の利用が減ったため減収となった。今後に向けて業態を変えることで運営を維持できるよう模索しているところだ。また、民泊事業はインバウンドや国内旅行者の減少で売上に影響が出たものの、法人向けにマンスリーでテレワ ーク用スペースとしての貸出を行ったところ、需要があることが分かった。民泊についてはひとまずしのいでいけそうだというのが現状だ。

――コロナウイルス感染症を通じて管理業務の変化は。 

 新宮氏 業界内では働き方改革への取り組みとして、テレワークや残業削減に挑戦してきたが、感染症拡大前はなかなか進まない一面もあった。しかし、今回の感染症拡大防止のために各社が否応なく必死に実践したことで、「やってみたらでき る」ということが分かったことは大きな発見だ。感染症の収束後も当社はテレワークを進めていきたい。これまで事業拡大に伴って採用を増やし、人が増えたことで事務所のスペースが足りないと苦慮してきたが、これからはオフィス全体のスペ ースを現況以上に広げないつもりだ。また、打ち合わせを行うために移動に費やしてきた旅費交通費、会議費などを抑えることで、IT関連により投資していきたい。国全体が本気でデジタル化に舵を切ろうとしているタイミングでもあり、管理業界でも押印の省略などに向かっている。当社も管理員業務の省人化のひとつとして1人の管理員で複数のマンションの管理員業務を行う端末(あなぶきリモートコンシェルジュ)の実証実験を進めているが、機械化や省人化への取り組みに対する管理組合の理解は得やすくなったと感じる。感染症防止を機会に広げていけると実感している。

専有部リフォームの機能をグループ内で強化

――ホームライフ管理や建衛工業など、昨年は積極的にM&Aを展開した。戦略は。

 新宮氏 マンション管理については、四国と九州エリアでは当社のシェアは一定の水準まで増やすことができ、東海地区や首都圏でも成果が出てきた。今後は後発である東北、北陸エリアで当社の管理受託戸数のシェアを伸ばしていきたい。 また、当社グループ会社の機能を伸ばし、グループとしての多角的な能力を高めていきたい。例えば当社グループ内でビル清掃や設備点検を担う会社「あなぶきクリーンサービス」の営業エリアは西日本だけだ。首都圏では消防設備点検が実施できる会社がグループにあるものの、建物の設備・清掃関連の会社は持っていない。各エリアで当社グループの機能を拡充していくために戦略的にM&Aを使っていく方針だ。コロナの影響によってテレワークが浸透するなど生活スタイルが変化しているので、今後は首都圏などでも専有部リフォーム工事が盛んになると予測する。専有部リフォームの機能をM&Aを絡めてグループ内で強化していきたい。

――トレーラーハウスによる顔認証技術を使った無人店舗の設置など、新規事業の展開について。 

 新宮氏 長崎市の管理受託マンションで2店舗目の無人店舗「FACE MART」を開設した。分譲マンションの敷地内に設置し、マンション居住者に限定したクローズド型のスーパーマーケットだ。坂道が多い地形的な特性と高齢の居住者が多いというマンションの特性から管理組合には喜んでもらっている。無人店舗の設置によって利益が出るということはない。ただマンションの社会課題を解決することで当社グループへ関心を寄せてもらうことを目的に設置しており、7年かけて投資した資金が徐々に回収できたらよいという思いで運営している。管理組合には「居住者の皆さんが利用してくれないと無人店舗はつぶれてしまうから、育てるような気持ちで利用してください」と話している。無人店舗を増やしていくには、無人店舗の商品を納入する事業者の確保が課題で、地元のスーパーマーケットや生協などの協力を取り付け、できれば全国で展開していきたい。 

 利便性について思いを馳せてみると、銀行は昔、銀行店舗に行かないと出入金ができなかった。ATMができて銀行店舗に行かなくてもよくなり、ついにはコンビニにATMが設置されるようになった。どんどん利用者に近づいている。コンビニのATMに勝るものは何かといえば、より自宅に近いものだろうと考える。便利だからこそ使ってもらえるし、その便利さがきっかけで当社グループの他のサービスに目を向けてもらえるのではないか。 

 かねてより、シェア(共有)の発想で管理業界やマンションの住まい方を見直したいという考えを持っていた。シェアサイクルやシェアカー、無人店舗など、シェアの要素を詰め込んだマンションのモデルケースをグループ会社の穴吹興産と共に作りたい。必要以上に機械式駐車場を設置しなくてよいし、駐輪場を広く取らなくていい。空いたスペースは共用施設として有効活用できる。これまで当社はシェアサイクルやカーシェア事業で実績を重ねてきたので、そろそろ実際のマンションに取り入れてみたいという思いがあるョン管理については、四国と九州エリアでは当社のシェアは一定の水準まで増やすことができ、東海地区や首都圏でも成果が出てきた。今後は後発である東北、北日本エリアで当社の管理受託戸数のシェアを伸ばしていきたい。
 

 また、当社グループ会社の機能を伸ばし、グループとしての多角的な能力を高めていきたい。例えば当社グループ内でビル清掃や設備点検を担う会社「あなぶきクリーンサービス」の営業エリアは西日本だけだ。首都圏では消防設備点検が実施できる会社がグループにあるものの、建物の設備・清掃関連の会社は持っていない。各エリアで当社グループの機能を拡充していくために戦略的にM&Aを使っていく方針だ。今後は首都圏などでもコロナの影響によってテレワークなど生活スタイルが変化しているので、専有部リフォーム工事が盛んになると予測する。専有部リフォームの機能をM&Aを絡めてグループ内で強化していきたい。

(トップインタビュー;マンション管理の未来 第46回 穴吹ハウジングサービス社長 新宮 章弘氏②へ続く)

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