トップインタビュー マンション管理の未来60 中銀インテグレーション社長 渡辺蔵人氏(下)



超高齢社会を迎えた中で増え続けるマンションストック。建物の老朽化と入居者の高齢化に加え、管理員の高齢化という「三つの老い」が進み、修繕・改修工事等も含むマンション管理の重要性がますます高まっている。このコーナーではトップインタビューを通じてマンション管理の未来を追う。今回は、多世代居住型健康スマートタウン「吹田サスティナブル・スマートタウン(SST)」(大阪府吹田市)でシニア分譲マンションの管理・運営に取り組む中銀インテグレーションの渡辺蔵人社長に、今後の展望などを聞いた。

トップインタビュー マンション管理の未来60 中銀インテグレーション社長 渡辺蔵人氏(上)より続く

自治体の管理適正化推進計画の広がりを期待

――マンション管理計画認定制度とマンション管理適正評価制度がスタートした。どう取り組むか。

 渡辺氏 当社のマンションは築古が多いので評価が低くなってしまうのではないかという懸念がある。管理組合には説明しており、順次取り組んでいきたいが、組合員が高齢者なので積極的にはなりにくい。管理組合にうまく伝わるように根気よく説明するしかない。コミュニティに関する評価は表れにくく、現況ではどちらかというと建物の評価に比重がある制度なので、管理組合としてもどうも乗り気になれないようだ。長期修繕計画の整備等のテコ入れをしていきたい。

 両制度はマンション管理業にとっては有益な仕組みだ。それぞれの項目が目標になって、管理の質を高める指標、つまり目標値になるので、管理業界全体がアカデミックな業界になったという印象を持っている。流通市場がどう評価するかはこれからだ。本格的な稼働を期待したい。

 自治体の管理適正化推進計画がもっと広がってくれることを期待する。ストックを評価する仕組みが今までなかったところに、管理の違いを示す指標が創設されたことは喜ばしい。

――今後の管理業界の見通しについて。

 渡辺氏 引き続き気を緩めることができないコロナへの対応と、ウクライナ危機の影響は注視している。大浴場のある当社のシニア向け分譲マンションの場合、水道光熱費が値上がりしてしまうと管理組合に直撃するため切実だ。物価は上昇基調にあるので一般の分譲マンションの管理費に対する管理組合の反応にも影響が出てくるのではないかと見ている。

 昨年以降、分譲マンションの買取再販ではリフォーム後のエアコンが設置できない、あるいはトイレの温水洗浄便座が入荷しないと聞くので、こういった備品の納期遅延は心配だ。

 コロナや物価の高騰など懸念材料は多いが、一方でマンション管理業界そのものの価値は高まっていく気がしている。アメリカ視察に行った際、マンションに居住する住民だけではうまくいかない課題があるからこそ、管理会社の価値があるという話を聞いた。日本においても全くその通りだと思う。マンション管理会社と管理組合は車の両輪としてマンションを良好な環境にしていくという同じ目的に向かっていかなければならないと思う。アメリカではマンション管理に携わる住民の人々に学んでもらう仕組みがあった。日本でも法律的なレクチャーを管理組合の理事に行うだけでなく、コミュニティをうまく機能させる仕組みについても皆が知っておいてもらえると円滑なマンション管理組合運営ができるのではないかと思う。共に助け合うという気持ちがないとコミュニティはうまくいかない。そのベースとなる知識が広まると良いと思う。

##渡辺 蔵人氏(わたなべ くらんど)氏

1960年10月2日生まれ、東京国際大学教養学部卒業、1986年4月㈱中銀ライフケア入社。同年9月同社取締役を経て、1991年10月より同社代表取締役に就任。2003年12月中銀ハウジング㈱代表取締役および中銀コーポレーション㈱代表取締役(現職)、中銀ライフケアホーム㈱代表取締役(現職)就任。2006年4月中銀ハウジング㈱と㈱中銀ライフケアが合併し、中銀インテグレーション㈱に商号変更。

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