トップインタビュー マンション管理の未来 60 中銀インテグレーション社長 渡辺蔵人氏(上)


超高齢社会を迎えた中で増え続けるマンションストック。建物の老朽化と入居者の高齢化に加え、管理員の高齢化という「三つの老い」が進み、修繕・改修工事等も含むマンション管理の重要性がますます高まっている。このコーナーではトップインタビューを通じてマンション管理の未来を追う。今回は、多世代居住型健康スマートタウン「吹田サスティナブル・スマートタウン(SST)」(大阪府吹田市)でシニア分譲マンションの管理・運営に取り組む中銀インテグレーションの渡辺蔵人社長に、今後の展望などを聞いた。

タウンマネジメント組織に参画 多世代居住型街づくりからノウハウを学ぶ

コロナ対応に苦慮、土石流災害を経験

――マンション管理における課題と戦略について。
 渡辺氏 シニア向け分譲マンションをはじめとして高齢者の住まいを運営していく上でコロナ対応に苦慮した。消毒を徹底する一方で、イベント・サークル活動のほとんどを中止にせざるを得なかった。緊急事態宣言、宣言解除、まん延防止等重点措置と、そのたびに管理組合と共に規制を緩めたり強めたりの繰り返しになった。当社のシニア向け分譲マンションには看護師がいて、ワクチン接種の情報を居住者から得られる状況にあったので、どれくらいの割合の居住者が接種しているかを把握して対策を進めた。昨年から従業員の家族感染事例が発生し、そちらの対応にも追われた。当社の場合は高齢者への生活支援業務を行っており、リモートワークが適さない。従業員の検温、体調の申告を徹底し、出勤を基本に業務に当たってもらった。今年に入り、これまでの経験を生かしながら自粛のやり方がつかめるようになってきた。
 人が集まるイベントを中止したり、外出を控えたため、居住者の体力低下が顕著だ。蔓延防止が解除になった時点で「散歩の会」を熱海のシニア向け分譲マンション居住者を対象に実施したところ、参加希望者が多かった。居住者同士の交流や運動、イベントに対する欲求が高まっている。
 リモートでのイベント実施に関心を持っている。美術展をリモートで見学することはできるのではないか等の構想を巡らせている。

――人手不足について。
 渡辺氏 当社の施設が集中する静岡県熱海についてはもともと人口が少なく、人員が集まりにくかった。熱海以外の都市型の施設はだいたい集められている。外国人人材を確保したいとかねてより考えていたが、コロナ禍で海外からの渡航が難しくなり、やっと5月にベトナムより2名が働いてもらえることになった。
 熱海には当社の施設が10カ所あり、人手が一時的に足りない場合や災害のような緊急事態ではお互いに応援を頼みながらやりくりできている点では社員に感謝している。昨年の熱海で発生した土石流災害では幸いにして当社社員は無事だったものの、一般マンションを含めた4施設が停電に見舞われた。このうち1カ所は電気が使えないことで部屋内の水道が使えなくなってしまった。簡易トイレなど当社の他施設の備蓄品を集めて熱海の拠点に勤務する社員で山を越えて物資を運び入れた。当社のグループ内で助け合うという暗黙の了解が社員にあり、なんとかこなせた。
 災害は今後も発生する可能性があり、対策を十分にしたい。災害は時間を経ることで復旧が期待できるが、コロナは先が読めない。コミュニティを作る概念が変わってきてしまったと認識している。

コミュニティ支援を継続する仕組みが必要

――「Suita SST(サスティナブル・スマートタウン)ではシニア向け分譲マンション「パークナード吹田SSTエクラ」の管理がスタートした。
 渡辺氏 Suita SSTはパナソニックを中心にした15団体と吹田市で進める多世代居住型健康スマートタウンだ。当社はその中のシニア向け分譲マンション126戸の共同事業社の1社として参画すると共に管理・運営業務を担う。また、他団体と共に一般社団法人も立ち上げ、タウンマネジメントの一翼を担っている。当社としては、「大阪大学グローバルビレッジ津雲台」の一部にサービス付き高齢者向け住宅を管理・運営する中で多世代交流の街づくりの経験はあるものの、多団体と設立した一般社団法人でタウンマネジメントを担うのは初めての試みとなる。健康をテーマにした多世代の街づくりへの参画は当社にとって価値があるし、学びも多い。今後、Suita SSTからも様々な情報を発信し、近隣のファミリーマンションや商業施設の来場者を含めた多様な展開ができることを期待している。

――今後、取り組みたい事業は。
 渡辺氏 一般社団法人のような利益を追求しない組織がコミュニティのサポートを継続する仕組みは必要だと感じている。一般の分譲マンション管理においても管理会社が、コミュニティづくりのために管理組合に一生懸命働きかけるものの、なかなか盛り上がらなくて続かない例もあると聞く。企業1社の力では限界がある。しかし、コミュニティを支援する機能は必要だ。昔は町内会がその役割を担っていた。しかし、最近は町内会に加入しない世帯が増え、加入のメリットが住民に伝わりにくいのが実態だ。当社が関与するSSTのタウンマネジメントでは、管理組合単位でタウンマネジメント組織に加入頂いている。世帯単位ではなく管理組合単位という仕組みはめずらしい。リターンが住民に目に見える形になって、皆にとってメリットがある仕組みにしていきたい。
 多世代交流はやってみると難しい。当社のシニア向けマンションのメンバー会(分譲マンション内の自治会)で町内会と夏祭りを開催してみたところ、世代間ギャップがあったり、活動時間帯が高齢者と子育て世代で違っていたり、様々な要因でメンバー会と町内会で切り分けて開催しようとしてしまった例があった。タウンマネジメント組織であれば一本化できる。SSTのノウハウを当社にも生かしていきたい。
 当社はIT化が遅れている。高齢者がメインになるのでデジタル機器が使いこなせないという点が大きい。管理業務においては将来に向けて総会の電子投票を含めて非常に大事なことだと認識している。これを踏まえて当社では居住者の健康管理のデータを医師と共有できるような仕組みを構築しているところだ。SSTでもタブレットで健康に関するデータを管理・運用する取り組みがあるので、課題を検証して当社に取り入れていきたい。

トップインタビュー マンション管理の未来 60 中銀インテグレーション社長 渡辺蔵人氏(下)へ続く (予定)

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