2021年地価公示ー再開発と人口動態から見る「札・仙・広・福」の堅調さ
北海道ボールパーク(北広島市HPより)

 コロナ禍によるインバウンド需要の消失、移動制限による店舗などの需要減により、地価が大幅に下落した3大都市圏に対し、地方中枢都市である札幌・仙台・広島・福岡(札仙広福=地方4市)の地価動向は、前年よりも上昇幅は縮小したが、広島の商業地を除いて上昇を維持した。これら4都市はインバウンド頼みではなく、実需に支えられて堅調さを維持している。

2021年地価公示(地方4市)

 例えば札幌市では住宅地で4.3%、商業地では2.9%とそれぞれ上昇した。住宅地の上昇率は各都道府県所在地の中で最大だ。駅徒歩圏の利便性が高い地域を中心に住宅需要が堅調だったため。高級住宅街が立地する中央区の需要が堅調であったほか、手稲区や厚別区など利便性に加えて相対的に割安感があるエリアでも戸建て住宅の取引が活発だった。

北海道ボールパーク完成予想(北広島市ボールパーク特設サイトより)

 商業地を見るとオフィス需要の堅調さは従前から変わらず、空室率が低い状態が継続。JR札幌駅南口に広がる既成のオフィス街に加え、駅北側や北海道新幹線開通に伴う新ホームが設置される駅東側では再開発計画が進展中であり投資資金が入っている。再開発は札幌駅周辺の中心部だけでなく、2023年に北広島市で開業予定の「北海道ボールパーク」周辺部でも計画が進む。札幌の郊外でありながら、北広島では雇用増を見込んで札幌市の住宅需要が波及、住宅地地価が15%以上上昇、商業地も12%上昇した。

アクロス福岡

 福岡市では住宅地が3.3%上昇、商業地が6.6%上昇。住宅地については中心部以外の相対的に割安感のある地域にも需要が波及。商業地は天神で「天神ビッグバン」計画が進捗中であるほか、地下鉄七隈線の来年度中の延伸計画に伴い繁華性のあるエリアが拡大。中央区清川2、同平尾2、同春吉3、博多区店屋町、博多区奈良屋町、同祇園町の地点がいずれも12〜15%上昇した。

 地方主要都市はコロナ禍も人口増加、底堅い実需

 市街地再開発は実需を喚起し、仙台市では東北大学農学部跡地開発の周辺部の需要が旺盛であるほか、広島市ではJR広島駅北口開発及び南口再開発による期待感から住宅を含めた土地需要が拡大している。なお広島市の商業地が下落したのは、中心商業地である八丁堀・紙屋町でインバウンドを見込んだホテル・店舗等の需要が減退したため。

 コロナ禍において東京は人口が減少したが、地方では増加に転じたり、減少の度合いが改善した地域が散見される。2020年通年で都道府県の転出入の動向を見ると 北海道、宮城、福岡が転入超過となった。広島は転出超過のままだが、19年と比較すると出超の度合いは改善している。札仙広福のような主要都市のない県でも、例えば岐阜や静岡、山口、香川、徳島なども同様の傾向にあり、コロナ禍をきっかけとした企業の人員の分散配置などが行われている可能性もある。

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