5月18日付で宅建業法改正による電子契約が全面解禁した。宅地建物取引業法の改正を含めたデジタル改革関連法では契約の際に必要な重要事項説明書(35条書面)と契約書(37条書面)の交付について紙の交付を不要とし、不動産契約の完全なオンライン化が実現した。
賃貸仲介大手のハウスコムは18日の解禁に合わせて、賃貸仲介店舗全店にて賃貸契約に関わる書類の電子交付に対応した。具体的には契約相手側の同意が得られた場合に限り、ネットを通じた重要事項説明と重要事項説明書面の電子交付、および電子契約と契約書の交付のほか電子更新を実現した。同社は不動産仲介業務のDX化(不動産DX)に向けて取り組んでおり、法改正を受けて書面の作成・郵送コストの削減、書類保管の効率化を目指している。
不動産契約におけるオンライン対応は主に物件内見と契約の2段階に分かれる。このうち物件の見学は実物を見るケースがほとんど。同社によるとオンラインでの内見は顧客の1、2割程度しか実施されていない。一方で事務的なバックヤードの部分については脱ハンコ・ペーパーレス化がユーザーメリットとなるため、オンライン契約は将来的に8割程度まで伸びることを見込んでいる。「顧客にとってより納得度の高いような流れになっていけば、当社としても全体のコストがかなり削減できる」(ハウスコム)と考える。
今後は電子サインを筆頭にセキュリティ対策の確立が重要となってくる。現状各社が導入する電子署名は、クラウドサインやGMOサインといった電子化サービス提供事業者を通じ署名をする「立会人型」がほとんどとみられるが、電子証明を発行して当事者同士が電子署名をする「当事者型」の普及も見込まれる。
野村不動産ソリューションズでは18日付で電子署名にクラウドサインを活用した立会人型のシステム(ムスベルfor仲介)を個人向けの売買仲介を行うすべての店舗で電子契約を行える体制を整えた。先行して導入(紙の書面および電子契約)した都心部の2店舗では契約に至った事例もある。今後について野村不動産ソリューションズでは「当事者型」署名の研究も専門業者と共同で開始、消費者ニーズに沿った電子契約の在り方を模索していく。