中古マンションは管理を買えと言われるが―ヒントはコーポラティブハウスにあり?―  (有)studio harappa 村島正彦(下)
(有)studio harappa 代表 村島正彦

中古マンションは管理を買えと言われるが―ヒントはコーポラティブハウスにあり?―  (有)studio harappa 村島正彦(上)より続く

 

コーポラティブハウスにお手本が


 つい先日引き受けた中古マンションの購入相談では、その検討対象物件の一つに川崎市のコーポラティブハウスが含まれていた。
 コーポラティブハウスとは、住民らが主体となって計画から建設を行うマンション(希に戸建て型もある)の呼称である。日本では、1960年代末に、土地高騰や住宅難から自然発生的に始まったとされ、80年代には公団・公社などが企画、2000年前後には不動産ベンチャーの都市デザインシステム(現UDS)等が企画・募集・コーディネートを手掛けるなど、住まい手主体のマンションづくりを行ってきた。現在でも、東京であればコプラスやアーキネット、都市住宅とまちづくり研究会などが企画・募集・コーディネートを行っている。
 コーポラティブハウスのメリットとして主に「適正価格で住宅を入手できる」「住まい手の希望を取り入れた自由設計ができる」「良好なコミュニティがつくられる」の3つが挙げられる。
 上記中古のコーポラティブハウス購入の相談に対して、即座に「買ってよい中古物件だと思う。前向きに情報収集しては」と回答した。
 私は、自らの住まいがコーポラティブハウスであり、22年居住している。また、2012年からNPOコーポラティブハウス全国推進協議会の理事をつとめている。5~6年前から、同協議会の活動の一環として、築年数30~40年超のコーポラティブハウスを訪問調査しており、いずれも細かな課題を抱えてはいるものの、極めて良好な管理がなされているという実例を見聞きしている。
 千葉大学大学院修士課程の笹尾吉晃氏が協議会の訪問調査に同行してまとめた論文「高経年コーポラティブハウスの管理形態にみる適正な維持管理の成立要件と一般分譲マンションへの適用性に関する研究」に詳細は譲るが、築年数を経るなかでマンション管理に柔軟に工夫し対応してきた居住者が主体となったコーポラティブハウスならではの取り組みが注目される。コーポラティブハウス特有の建設時から培ったコミュニティが、管理組合の運営や合意形成において、課題解決に向け前向きな効用をもたらしたと見てよいだろう。
 30~40年を超えると、初期住民の転居や高齢化による管理組合理事の辞退、さらには住民が鬼籍に入るなど、良好なコミュニティ・管理組合活動の継承が困難になる。ただし、取材したコーポラティブハウスはいずれも、中古購入等による新住民も既存コミュニティにうまく引き入れ馴染んでもらい、当初からの良好な管理(とその精神)を継承して継続的な管理が行えていることがうかがえた。
 通常の分譲マンションで、素晴らしい管理組合運営を行っているところを幾つも知っているが、コーポラティブハウスはその出自故に、管理について元々の偏差値が高いということだろう。

100年利用を目指し
新入居者も管理への積極的参加を


 築44年の日野市のコーポラティブハウス(1978年建築)では、2016年の3回目の大規模修繕工事に併せて、新耐震基準に対応する耐震改修と開口部のカバー工法による複層ガラス窓への取り替え工事(省エネ改修)を行っていた。入居時に40歳であれば84歳だ。理事会の高齢化は、日常の管理がおろそかになるうえに修繕への意欲の減退を招く。ましてや、多額の一時金を要しもする大規模修繕となると躊躇しがちだ。それが、このコーポラティブハウスでは、管理組合の限られた予算配分のなかで、耐震・省エネ改修の補助金を申請し、住宅金融支援機構からの借り入れも行うことで現在基準でも見劣りのしない建物の性能向上を含む改修・維持管理を実現していることに驚いた。
 このようなマンションこそ、買ってよいと太鼓判を押せる中古マンションであるだろう。まさに「マンションは管理で買え」の王道をいく物件だ。
笹尾氏の論考では、高経年化したコーポラティブハウスでは、①理事会の適正運営(公平性)の工夫・高齢化への対応、②売却や賃貸に伴う新居住者の管理への理解を促進、③建物老朽化への修繕積立金の見直しを含む適正な対応等が柔軟に行われていると分析されていた。
 国の調査では、2020年末に103万戸あった築40年以上のマンションは、2040年には405万戸になるとの予測だ。コーポラティブハウスの管理組合による管理の優れている点についての指摘は、今後激増する高経年マンションの管理において見習うべきポイントだと思われる。
 私は、鉄筋コンクリート造の建築=マンションは、基本的に100年の利用に耐え得ると考えている。しかしそれは適切な維持管理が行われた上でのことだ。
これから中古マンションを購入しようとする若い世代も、マンション管理の問題に留意して購入し、また居住後の管理(組合)への積極的な理解・参画が必要になるだろう。

2022/4/20 不動産経済Focus&Research

不動産経済Focus&Research
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