(提供:日刊不動産経済通信)安田不動産が多くの土地を持つ隅田川西側の日本橋浜町3丁目一帯に独特の活気が出てきた。同社が再開発に参画した「トルナーレ」などの大型ビルを基軸とする街に、古い建物や遊休地を生かしたカフェや雑貨店、コワーキング、ホテルなどが出店し、地元住民や国内外の観光客らに人気だ。他所にない店舗の誘致や住民参加型イベントの企画・運営など、多様な層を巻き込む安田不動産の仕掛けが実を結び、浜町が広域から人を呼び集める個性的な街に変わった。
この圏域には中央区の再開発で00年前後に「Fタワー」「スカイゲート」「トルナーレ」などの複合ビルが竣工。順調に稼働していたが、世界同時不況で複数の入居企業が賃料の安い湾岸などに転出した。高齢化やマンション開発などの余波で新旧住民の暮らし方に温度差も生まれていて、地域分断に危機感を持った安田不動産が地元と手を組み地域再生に乗り出した。
浜町3丁目のビジョンを「手仕事と緑の見える街」に定め、15年頃から年1、2棟ペースで遊休地などに店舗を誘致。既存建物を改修した「浜ハウス」や「浜町ラボ」などを交流拠点として使い、案件ごとに人と資金を集めて祭りや交流会、清掃活動などを切り回す。17年には町会・商店会と街づくりの任意組織を発足。地元の明治座やギンビス、ロイヤルパークホテルらが合流し、20年に一般社団法人に。22年には区から都市再生推進法人に指定され、放置自転車の解消案や緑道の整備などを行政に働き掛けるようになった。安田不動産開発事業本部開発第一部第一課の森梓副長は「浜町への出店要望が増えた。暮らす人の顔が見える街にしたい」と話す。新たに銭湯付きの賃貸住宅なども建設中で、同業他社も浜町の地域運営に注目している。