シリーズ;空き家活用新時代 ⑧空き家価格形成は自由、インデックスもー「空き家売ります」掲示板の家いちば社長・藤木哲也氏(下)
家いちば社長・藤木氏

シリーズ;空き家活用新時代 ⑦より続く

増加を続ける空き家の対策を巡っては、「空家対策特措法」などの法整備、税制や助成金、空き家バンクなど様々な制度が生まれ、民間でも多種多様な空き家関連ビジネスが誕生している。最前線に立つプレーヤーの声を聞いた。「空き家売ります」という掲示板「家いちば」を運営する、家いちば社長の藤木哲也氏に、空き家の売り買いをマッチングさせるコツやコロナ禍におけるサイトの運営状況などについて聞いた。

空き家のインデックス

ー今のスタイルを続けていくか

藤木氏 市場に出ないで眠っている不動産を流通させることが、とりあえずのゴールだ。だがその先のことも考えている。そもそも従来の不動産流通は、「価格調整機能」に乏しい。はっきり言えばないと言える。都心なら大体、築年や平米数などでほぼ金額が出せるため、その金額で取引される。通常、仲介会社は、売却を受任するために高く査定する。そして高い値段で受任した不動産屋は一生懸命高く売ろうとする。つまり従来型の流通の仕組みに本来の価格調整機能はない。3500万円で査定した物件を2000万円で売るようなことは起こらない。

ー家いちばでは、指値、値引きが自由に行われている。

成約に至った空き家(家いちば提供)

藤木氏 売主が0円で出した物件が、200万円で決まったりする。ということはその物件の価値は200万円だったということだ。元値が0円だったのは、取引の事例、データがなく分からなかったから売主がそうしただけだ。そもそも今までの空き家は安すぎた。今は奪い合いで価格が上がり始めたと感じていて、そうやって価格は自然と形成されていくだろう。提示額の1割になったり、数倍になることもある。つまり家いちばでは、純粋な需要と供給による経済力学が働く。売れなければ価格を下げればいい。下げていけばいずれ売れる。マイナス価格(買ってくれたらお金を上げる)もある。そうすると、どんな田舎のどんなボロ家でも、市場に乗るし、相場形成の一助となる。だが今はそれを検証するにはサンプル数が絶対的に少ない。将来的には自社で取引事例を積み上げていき、「家いちばインデックス」のようなものを構築していこうという構想もある。

ーそのインデックスがあれば何ができるか

藤木氏 例えば自宅を耐震補強工事などのリフォームを行う場合。100万円の家に改修費用300万円を掛けたら、将来売却する際に、400万円以上で売れると分かっていれば、その時点で300万円の追加投資と意思決定ができる。つまり最終的にいくらで売れるか分かるようになれば、投資が積極的に進むようになる。今は、空き家が空き家のまま老朽化で放置されているが、高く売れるならばお金を掛ける。そうなると自分が住んでいる間は積極的にリフォームなどするから時代に合わせて快適性が維持され、買う方も積極的にこうした家を選ぶようになり、さらに高く売れるようになる。そうでない家は淘汰されて安価に留まる。その市場のインセンティブによって空き家のクオリティが上がり、次第に日本人全体の住環境が高まっていくだろう。今はその逆になってしまっている。将来いくらで売れるか分からないから、寒いまま、雨漏りがしたままの家に我慢して住んでいる。少しずつでもお金を掛けて、住環境を上げていったほうが、限りある人生を有意義に過ごすことができるようになる。そこに補助金を出す発想でなく、市場の価格調整機能をしっかり作ることで、将来的価値によって投資を促すことが不可欠だ。そうすれば、銀行も融資しやすくなり、経済も活発化する。

コロナでHPアクセスは2.5倍に

ー2020年の状況について

藤木氏 去年5月くらいからアクセスが急増した。20年は通期で前年比2.5倍のアクセス数になった。買いたいという人の数も2倍に増え売り上げもそれぐらい上がった。コロナで恩恵を受けた。問い合わせ内容はテキストデータで蓄積している。データ分析をすると、リモートだとかコロナだとかのキーワードが急増した。コロナをきっかけに仕事がリモートになり、日本人のライフスタイル志向が激変したと言っていい。中身を見ると、完全に移住するというよりも、リモートワークによる二拠点化と移住と中間のようなものもよく見かけるようになった。だが一方で売る方の件数は2割ぐらいしか増えていない。そのため売る物件が足りなくて慢性的に供給不足の状況だ。

ー希望のエリアは

藤木氏 関東だと圏央道エリアがホットだ。埼玉の北部や秩父地方、東京だと奥多摩、茨城の南部とか、鹿島や外房などの海沿いのエリアなどが人気が高い。取扱件数が増えるだけでなく、平均成約価格も上昇いる。従来はセカンドハウス需要で、買う条件として安さを重視し、クオリティはそこそこという人が大半だった。それがコロナ禍で、都心に住んで週末だけ田舎に遊びに行くというライフスタイルがひっくり返り、普段を田舎で過ごし、都心は月1回だけでいいというようになった。そうなると、普段いる場所だから少しお金を掛けてもいいというマインドになる。

ー予算は

藤木氏 家いちばの売れ筋が100〜200万で多少の修繕が必要という物件が人気。ただし今は、コロナ以前では少数派だった1000万円以上という「高額物件」の人気が高まっている。この高額物件の成約件数が以前の3倍に増えた。しかもそれを現金一括で買う人ような人たちだ。こういう人はより趣味性が高い空き家を購入したり、古民家のような佇まいにこだわったりする。未登記で道路も私道、上下水道なし、管理会社も撤退したような空き家が900万円で成約した。場所は三重県の志摩で、海が目の前にあり、建物の状態はかなり綺麗だった。購入した人は家からの景色が気に入ったということらしい。心が動けば必ずお金も動くということだ。売主の売れないという先入観が障害になっている。まずは意識改革からだ。

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