改正マンション管理適正化法・マンション建替円滑化法が完全施行 マンション管理士は重要な役割担う 瀬下・マンション管理士会連合会会長インタビュー②

瀬下・マンション管理士会連合会会長インタビュー①より続く

ノウハウを管理士会で共有し 全国的に自治体との連携を強化

――認定申請の事前確認業務を行う上での体制の確保は。

瀬下氏 4月の全面施行のタイミングで管理計画認定制度をスタートする自治体はまだ限定的だが、数年後には多くの自治体で認定制度を行うようになると見込まれる。日管連としては体制を確保しなくてはならないと考えており、登録していない管理士の掘り起こしなどに取り組んでいきたい。管理士や管理士会が改正法に組み込まれた業務で重要な役割を担う点は認識が広がってきている。都市部にいて管理士会に所属していない管理士に対して、管理士会に入会しなければ、と思ってもらえるようにしたい。

――自治体のマンション施策との連携をどう進めるか。

瀬下氏 実態調査について言えば、東京都などで協力した先行事例があり、2021年度は国の補助事業で全国12の自治体の実態調査を日管連が行った。補助事業では、これまでに実態調査を実施したことのない自治体の調査にも協力しており、その取り組みは日管連としても蓄積できる経験になった。こうした事例は、全国の会員会が集まる会議などで情報共有し、業務の経験が少ない管理士会でも対応できるようにしていく。実態調査で行うアンケート調査や管理組合への訪問調査、ヒアリングは管理士にしかできない業務と考えており、全国的に行政との連携を強化したい。

 また、自治体の認定事務を支援する指定認定事務法人の設置もスタートする。管理士会が法人として指定されることを想定しているが、管理士会の中には任意団体もまだあるため、指定の要件となっている法人化を目指す管理士会も出ている。ただ、会員の人数が少ない管理士会では、日管連が指定を受け、その県を支援する方法も考えたい。管理計画認定制度で自治体が独自の認定基準を設定する場合は、指定認定事務法人が行政に代わり確認業務を担うので、対応できる体制を取りたい。

 改正法には自治体に主体的に取り組んでもらう内容があるが、まだ理解できていない自治体もあると感じる。会員会には、自治体の相談に対応できると働きかけてほしいと伝えている。認定制度を実施する際に自治体から頼られる存在になるよう、早くから関係を構築しておく必要がある。会員会が自治体に足を運んで改正法を周知し、意識を変えていくのも大事と考えている。

診断サービスは診断マニュアル改定

業務への対応は士業法制定の足掛かりに

――管理適正化診断サービスが認定制度と連携する。

瀬下氏 2015年にスタートして以降、診断件数は1万4000棟を超え、当初の想定をはるかに超える実績となっている。共用部の災害保険料の割引きというインセンティブがあったほか、診断費用が無料な点も大きかった。これまでに診断を受けたマンションからは、内容を更新するための再診断の依頼が相当数集まっているので、まずはその対応に力を注ぎたい。その中で管理計画認定制度の申請にもつなげられたらと考えている。

 新規の診断依頼については、サービスを受ける上で、日管連の研修を修了して診断に当たる「診断マンション管理士」が管理組合理事長と面談を行うのが前提としてあるので、面談の段階でサービスのメリットや管理計画認定制度と連携する意味などを十分に説明できるようにしていく。管理組合のニーズをヒアリングしながら、管理計画認定制度と連携して申請できることなどを理解してもらう。診断をした内容で認定制度の基準も満たすようであれば認定取得を勧めたり、クリアできない場合は改善点を指摘して認定に適合するよう助言することもできるだろう。

 管理計画認定制度の認定基準を診断項目に取り込むほか、診断マニュアルを法施行に合わせ更新した。マニュアルの更新講習は診断マンション管理士の全員に受講を求めており、講習は認定基準や認定制度を完全に理解できる内容にしているので、受講した管理士からも改正法への理解が進んでいない自治体や管理組合に周知し、関係を深めていきたい。

――法改正で、管理士や管理士会は今後どうあるべきか。

瀬下氏 法律に組み込まれた業務を管理士が中心となって担っていくには、唯一の全国団体であり管理士賠償責任保険を備える日管連が法律の中心にいられる団体になっていかなくてはならない。そのためにも、日管連が弁護士や行政書士といったほかの士業の団体と同様なレベルになっていく必要がある。日管連としての最終的な目標は「マンション管理士業法」の制定を掲げているが、法律の中心で業務を担う中では管理士の信頼を担保できるように注意・勧告等ができる体制も求められ、管理士業法の制定が必要になってくる。まずは今回の法改正で法律に組み込まれた業務に応えていくことを管理士の使命として取り組み、管理士業法の制定に向けた足掛かりにしたい。

2022/4/5 月刊マンションタイムズ

マンションタイムズ
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