マンション管理士は、地方自治体が行うマンションの実態把握への協力や管理組合からの相談への対応、管理計画認定制度に基づく認定申請の事前確認業務など、改正法に組み込まれた業務で中心的な役割を果たすことが期待される。マンション管理士を束ねる日本マンション管理士会連合会では法改正をどう捉えているか、また管理計画認定制度と連携する「マンション管理適正化診断サービス」をどう運用するか、瀬下義浩会長に考えを聞いた。
改正法の中心にいるのが管理士
――改正法をどう受け止めているか。
瀬下氏 改正法に組み込まれた業務はマンション管理士が担うことが多く、改正法の中心には管理士がいるという位置づけになると認識している。法改正のポイントもまさにその点で、改正前の法律は管理会社の業務を規定する内容が中心だったのに対し、今回の改正では管理士が中心に据えられた点が大きい。
マンション管理士は国家資格の中でも名称独占資格であって、資格がないと業務ができない業務独占資格ではなかった。それが法改正により、認定申請の事前確認など法律に基づいた業務を担えるようになる。日管連としても、今までは一民間団体の扱いだったところから、法律に組み込まれた業務に関わる団体として国の意向に沿った活動をしていく方針だ。
管理士がそうした業務を担う上では、日管連の会員会である各都道府県のマンション管理士会に入会する管理士を増やしていかなければならない。資格を取得しただけで専従の活動をしていない管理士も多くいるので、活動を働き掛けたい。
――改正法のポイントはどこか。
瀬下氏 管理計画認定制度により、認定されたマンションが不動産市場で評価されていくことに期待している。住宅性能評価制度で建物の性能が市場価格に反映されるのと同様に、マンション管理が市場評価される契機にしていきたい。
例えば米国ハワイ州では管理状況は情報開示が義務付けられていると聞いている。購入者側が管理状況を確認できないとユーザーの保護にならないという観点からだ。日本にはそうした考えがなく、管理状況は個人情報と同じように扱われ、情報が開示されない風潮が強い。宅建業者の中には、マンションは管理の状態がわからないため安心して売買できないという声もある。そうした懸念を打破し、管理の良好なマンションが流通していくために改正法が大きな一歩になる。
――管理状況の情報開示をどう促すか。
瀬下氏 管理状況を公開したくないマンションでは、良くないところを見せたくないという心理も働いているのではないかと考えられる。管理計画認定制度を契機にし、情報を公開できない要因があるのであれば、その要因を改善して情報を開示できるように考えを変えていかなくてはならない。いずれは管理情報の開示の義務付けも必要ではないかとも感じており、改正法は義務付けに向けた最初のステップとも捉えている。
また、改善点を指導するのも管理士の役割になる。認定申請を確認する業務などを通じ、改善点を知らしめていければと考えている。認定基準に適合するように課題を改善して管理に取り組めるよう、管理組合をコンサルタントしていきたい。
2022/4/5 月刊マンションタイムズ