―販売状況は好調だ。
村井氏 4~6月の受注は、前年同期比約1・8倍で推移した。新しい暮らしの需要で持ち家に関する関心が高まり、注文・分譲ともに建てるなら良いものをという風潮が増した。生活の中で、趣味や自分の時間をより重視するようになった。20歳代から30歳代のZ世代の顧客が増え、いかにZ世代に応えていくかを重視している。
―Z世代に向けた戦略とは。
村井氏 デジタルネイティブのZ世代は合理的に考えるが、欲しいものと良いものにはしっかり投資するので、今後の住宅購入で大きな伸びしろがあると考える。規格住宅がよく売れていてZ世代からの受注が牽引し、年間の戸建て住宅販売棟数の半分ほど(約500棟)を占めるまでになった。価格は注文住宅より1~2割抑えながら、注文住宅と同様の構造で木製サッシ3層ガラス回転窓や木製ベランダを採用し、しっかりとスウェーデンハウスブランドを貫いている。海外の高級車ブランドをイメージしてもらえば分かりやすい。最上級クラスでない商品もしっかりブランド像や基本性能を踏襲しているから、高い評価を受けている。住宅も同様で、そうした姿勢も含め、お客様に「欲しいもの」「良いもの」と捉えていただけている。商品面では、プランなどを選択する「ヘンマベスト」の仕様を、平屋も含めて170に拡大した。
―ほかの購入者層からの手応えは。
村井氏 全顧客層から受注が増えている。1億円以上の高価格帯案件の受注も、例年を上回っている。ワングレード・ハイスペック商品である点が大きい。窓など特徴的な部分も標準仕様だから、打ち合わせを経て過剰に予算が上がる事例が少なく価格面などで高い満足感につながっている。新たに始めた展示場のVRウォークスルーサイトの運用や全国一斉オンライン配信イベントも好調で、お客様のファン化も進んでいる。
―今後の戸建て住宅市場は。
村井氏 スウェーデンには「親の代で家、子の代で別荘を建て、孫の代でヨットを買う」という文化がある。改修しながら150年以上住み続けている戸建て住宅がたくさんあり、既存住宅市場が確立している。メンテナンスや改修を重ねた質の高い既存住宅は、住み始めた時より高く売れることも多い。米国や欧州では、長く住める良い家々が素晴らしい街並みを作ってきた。日本でマンションにも木を使おうというカーボンニュートラルの時代がきている中、海外の事例を参考にすると、長く住み継げる長期優良住宅の普及がより重要になることがわかる。ウッドショックを経て、国産材の利用促進の重要性も改めて明らかになった。住宅の主要構造材に樹齢30~50年の材木を用いるのが標準だが、海外ではより品質の高い60~80年材が一般的だ。長く住める家の普及のために、今後こうした観点も必要になるかもしれない。
―今後のブランド戦略は。
村井氏 豊かな暮らしのために長く住み継ぐことができる住宅を供給するという創業時からのブランド像を、ぶれずに貫いていく。京都の老舗企業のように、300年や500年といった長い視野で踏襲していく必要がある。人材育成や技術の伝承も同様だ。時代や技術の進歩に合わせて変わっていく部分もあるが、何を変え、何を変えないかをしっかり選択していく。(日刊不動産経済通信)