矢吹周平・国交省住宅局参事官インタビュー 自治体のマンションへのアプローチを位置づけ ガイドラインの水準は適正管理へのメッセージ
国交省・矢吹参事官

 改正法の柱のひとつはマンション管理の適正化の推進であり、それに向けて地方自治体が行う事務を法律上位置付けた。自治体の政策の一環として、適切な管理計画を持つマンションを認定できる点と、管理水準を引き上げるべきマンションに助言・指導等を行う点で、マンションに対する2つのアプローチができたことは大きなポイントと考えている。

 自治体の推進計画作成に向けた検討は加速している認識にある。国交省では作成意向について全国の自治体に調査しており、推進計画の作成を予定している自治体にあるマンションの割合を推計すると、法施行となる4月は日本全体のストック約675万戸に対し約145万戸と2割ほどだが、22年度末は約480万戸で7割、23年度末は約550万戸で8割をカバーする見込みとなっている。

 認定制度は、管理の状況をラベリングして適正に管理されているマンションがわかる形としていきたい。認定を取得する上では、長期修繕計画の策定・見直しや修繕積立金の設定で総会決議が必要なケースもある。修繕積立金額は、基本的には修繕積立金に関するガイドラインで示した水準を求めており、その水準への引き上げはハードルが高いという声があるのは認識している。とはいえ、調査などから適正に管理される上で必要な金額として算定しており、将来にわたり適正に管理していく上ではこの金額が必要、というメッセージにしたつもりだ。法改正を契機にガイドラインの内容と認定基準を紐づけたので、ガイドラインを参考に適正管理に必要な水準を考えるきっかけにしてほしい。

認定を取得すると住宅金融機構による融資の金利引下げというインセンティブが生まれるが、管理組合が認定制度への関心を高められるようほかのインセンティブも考えていきたい。また、不動産ポータルサイトに認定を受けたマンションを掲載できないか、サイトの運営企業とも意見交換していく。

 法改正で創設・拡充した制度の活用を促進するため、2022年度予算でも支援する。推進計画作成のために自治体が行うマンション実態調査を補助するほか、管理組合が認定制度の申請を行う上でマンション管理士などへの相談体制の整備も支援する。建替えや敷地売却、敷地分割制度の実施に向けては、建築士や弁護士などによる相談体制の整備もサポートする。

 このほか、老朽化マンションの長寿命化や再生に向けた取り組みでも先導的なものを支援しその普及につなげたい。「マンションストック長寿命化等モデル事業」を拡充し、リバースモーゲージの活用による修繕資金の確保や、共用部と専有部の配管更新を一体的に実施する取り組みなどを補助する。適正管理や長寿命化への新たな取り組みが根付くことに期待したい。

2022/4/5 月刊マンションタイムズ

マンションタイムズ
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