都心から郊外まで全エリアで好調だった、2021年の首都圏分譲マンション市場。コロナによる需要増大も手伝いデベロッパー各社が高収益を出す一方で、販売が好調なだけに事業用地の取得競争が激化し、土地高騰と建築費の高止まりの中、先行きは難しい舵取りを迫られている。2021年のマーケットを振り返り、今後の方向性を見る。
潮目の変化を敏感に察知する… ―首都圏マンション市場の今後を見る(上)より続く
郊外部の鍵は「買える価格」、需給バランス重要
エリアと商品ジャンルでデベの住み分けが進む
2022年の首都圏マンション市場はどう推移するのか。トータルブレインによると、着工数は2020年水準の5万2000戸~5万3000戸、販売戸数は3万2000戸~3万4000戸と予想。分譲価格は引続き5%程度上昇すると見る。特に郊外で販売が好転しているため、郊外案件を検討するデベが増加。結果的に郊外の用地仕入れ価格も上昇しており、郊外の価格上昇が見込まれている。ただ、郊外部では予算が限られるため、エリア・駅・駅距離は多少妥協しても、「買える価格」を重視する傾向が強まっている。テレワークの普及やサテライトオフィスの整備等による都心通勤の減少期待もあり、沿線・駅力や駅距離に多少難があっても、近隣に大型スーパーがあったり住環境が良好であれば、価格を優先して購入を検討する動きも強まっている。ただし、ターゲットが現在主力の共働き夫婦ではなく、専業主婦世帯となるため、価格と同様に需給バランスが重要な要素になると見ている。
都心に目を移すと、2021年に大幅増加した平均価格が1億円以上のハイグレード商品の供給がさらに増加し、大型化にシフトすると見られている。「プラウドタワー芝浦」(421戸)、「ブリリアタワー浜離宮」(420戸)、「パークタワー勝どきサウス」(1665戸)などの大型億ションは、足元で富裕層の動きが堅調で、販売も好調だ。今後も都心6区と目黒・品川区で計画中のハイグレード物件は80プロジェクト・4400戸程度が判明している。そのほか、再開発案件も多いため未判明分を含め1万1000戸が見込まれている。コロナ終息後は、海外富裕層による都心不動産購入の復活が期待されるものの、これらの都心大型物件が一気に市場に投入されると、売れ行き悪化も懸念される。歴年の億ション商品の供給ペースは年間1000~1500戸程度であり、億ション市場を維持するためには、2000~2500戸程度の供給にとどめることがポイントと見られている。
首都圏では満遍なく年間3万戸台前半の供給ペースが続く中で、供給エリアや商品ジャンルによって、デベの住み分けが進み、資金力のある大手、準大手、電鉄、商社系デベは、都心好立地および郊外ターミナル駅周辺の好立地を中心に事業を展開する。一方で中堅以下は、23区でも大手が入りづらい小規模案件や、マイナーエリアを含めた郊外を中心に事業を展開していくことが予想されている。戦略エリアを明確化し、自社ブランド力の確立、エリア内での用地情報源の徹底開拓等、仕入れ・販売の両面で他社に対する優位性を磨く必要性が高まっている。
一方、商品企画は、グロス圧縮対応で兼用と転用の発想、グレードとデザインの高級感等、高単価・グロス圧縮をカバーする魅力度を高める必要がある。コロナ対応、ワークスタイル・ライフスタイルの変化に対応した商品企画、SDGsへの対応、DX対応が引き続き求められる。
2022年も販売好調が続くと予想される中、好調下での仕入れとなるため、マンション用地は高値取得が前提となる。売値上昇につながるが、郊外ではユーザーがその価格について来られなくなる可能性があり、杉原氏は「売れ行き低下が起こるとすれば、2023年頃から、供給が集中した郊外から局地的に起こる」としたうえで、今年の仕入れに関しては、「特に郊外では検討エリアの需給バランスに最大限の注意が必要。今年から来年にかけての発売物件の売れ行きを注視し、潮目の変化を敏感に察知することが重要となる」と警鐘を鳴らす。
2022/3/15 不動産経済ファンドレビュー